共同演者 |
辻本 広紀(防衛医大・外科), 平木 修一(防衛医大・外科), 高畑 りさ(防衛医大・外科), 松本 佑介(防衛医大・外科), 吉田 一路(防衛医大・外科), 堀口 寛之(防衛医大・外科), 小野 聡(防衛医大防衛医学研究センター・外傷研究部門), 島崎 英幸(防衛医大・臨床検査医学), 山本 順司(防衛医大・外科), 長谷 和生(防衛医大・外科) |
抄録 |
【諸言】Gastritis Cystica Profunda (GCP)は,粘膜下層までに及ぶ嚢胞状の拡張した腺管を特徴とする病変であり,残胃の吻合部に認めることが多いとされる.今回我々はGCPを背景に発生し,内視鏡及びCT上4型胃癌との鑑別を要した早期多発胃癌の1例を経験したので報告する.【症例】60歳代,男性. 半年で5kgの体重減少を認めたため近医受診.胃内視鏡検査で体下部後壁,幽門前庭部にそれぞれ0-IIa病変認め,当科紹介となり手術目的で入院となった.【検査所見】胃内視鏡検査では幽門前庭小彎を中心として約2/3周性の0-IIa病変と体下部後壁に比較的隆起の高い0-IIa病変を認め,同部位の生検組織から高分化型管状腺癌と診断された.また,内視鏡の送気で幽門前庭部の拡張不良を認めたため4型病変の可能性も考えられた.造影CT検査では胃体中部から胃体下部にかけて,粘膜下層を中心とした胃壁の肥厚を認めた.【手術】腹腔鏡下幽門側胃切除術D1+郭清を施行した.手術中に明らかな胃壁の硬化像や癌の進展を疑わせる所見はなかった.【病理】病理組織学的に腫瘍は,クロマチンの増量した類円形の核と円柱状から不整形胞体を有する腫瘍細胞が,分枝・癒合を示しつつ管状に増殖していた.背景の胃には,肉眼的に粘膜ひだの肥厚としてみられた部分では,拡張した幽門腺管が平滑筋束を伴って粘膜下層に存在し,表層では粘膜筋板とも一部交錯しており,GCPに相当する像であった.【術後経過】術後は創部SSIが認められたものの経過は良好で術後13病日に軽快退院となった.【結語】GCPは粘膜下層を中心とした胃壁の肥厚が特徴的であり,術前に4型腫瘍との鑑別が必要である.またGCPを伴う胃癌では,多発病変を認めることがあり,注意深い術前検査と術後の厳重な経過観察が必要であると考えられた. |