セッション情報 シンポジウム4(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

胃がん検診の理想的な住み分け:新しい検診方式を目指して

タイトル 検S4-4:

胃がんリスクを考慮した新しい胃X線検診の試み

演者 安田 貢(香川県立がん検診センター・消化器科)
共同演者 青木 利佳(香川県立がん検診センター・消化器科), 山ノ井 昭(香川県立がん検診センター・消化器科)
抄録 【背景】近年,胃がん超低危険群のH.pylori(Hp)陰性者が増加し,胃がん検診へのリスク分類導入が喫緊課題になっている。今後の胃X線検診は,ABC検診による対策型検診の受け皿として,またリスク診断のツールとして,さらに重要な役割を担う必要がある。【目的】今回我々は香川県総合健診協会の消化器検診管理委員として,本年度よりHp感染を考慮した新管理区分を導入したので,その経緯と現状および今後の展望につき報告する。【方法】(1)これまでの協会の胃がん検診状況と問題点を検討。(2)Hp感染有無を反映した新管理区分と事後管理案の作成。読影委員への説明と画像集(CD)の配布。例題問題(30例)にて各委員のHp感染診断能等を検討。(3)実際の運営状況と今後の展望について考察。【結果】(1)平成20~22年度の平均成績は,受診者数27,186人,初回受診率19.5%,要精検率6.1%,精検受診率94.7%,がん発見率0.18%,陽性適中度2.8%と良好であったが,実際の読影ではHp陰性の胃底腺ポリープを要精査とする委員が数名存在した。(2)新管理区分は,5:悪性の診断が可能,4:悪性を積極的に疑う,3B:悪性病変か否か疑わしい,3A:悪性所見は無いが精査が必要,2:胃炎あり(Hp感染あり),1:異常なし(Hp未感染)とした。3点以上を要精査,2点は慢性胃炎にて逐年検診を積極的に勧めることにした。例題問題におけるHp診断能平均値は,学会認定医の第2読影(4名)で感度99.2%,特異度87.5%(3名が29問以上の正解),非認定医の第1読影(6名)で感度90.6%,特異度85.0%であった。認定医の一致率は23例で100%,7例で75%であった。【考察】今回我々はHp感染感度を重視し,好成績かつ許容範囲内であった学会認定医の判定を採用するという方針で新管理区分を導入したが,非認定医においても今後は背景粘膜を意識した読影が期待できるものと考えられた。現時点では,精査不要の胃炎症例には積極的な逐年検診を勧奨するのみだが,今後ABC検診が導入され,Hp除菌が安全に広く実施されれば,リスクの細分類や除菌勧奨も実施可能と考えている。
索引用語 胃X線, H.pylori