セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

小腸-症例 1

タイトル 外P-463:

血液透析患者に発症した門脈ガス血症を伴った腸管気腫症の1例

演者 森下 実(北陸病院・外科)
共同演者 荒能 義彦(北陸病院・外科), 松之木 愛香(北陸病院・外科), 飯田 茂穂(北陸病院・外科)
抄録 症例は68歳,男性.IgA腎症からの慢性腎不全に対して平成8年9月より血液透析導入となった.他の既往疾患としては高血圧,狭心症で内服加療中であり,また平成23年5月より高リン血症にて炭酸ランタン水和物チュブアル錠(ホスレノールチュブアル錠)内服開始となった.現病歴は平成25年1月,血液透析中に急激な腹痛,嘔吐を認め,ショック状態となった.輸液を確保し血圧維持を確認の上,腹部CTを施行したところ,骨盤内の小腸と考えられる腸管・腸管膜気腫を認め,一部穿通の可能性が疑われた.さらに腸間膜静脈,門脈ガス血症も認めたが,腹腔内遊離ガス像および腹水は認めなかった.また以前からのCTでも確認されていたが,腸管内に炭酸ランタン水和物による高吸収陰影を所々に認めた.血液生化学検査では炎症所見は認めず,疼痛はベンゾモルファン系オピオイド注で軽快したものの,既往疾患より全身状態の急激な増悪の可能性も考え,本人,家族に十分なICの上,同日緊急手術施行となった.下腹部正中切開で開腹したところ,漿液性の腹水を少量認めた.腸管を検索すると回盲部より30cmから100cmの小腸が浮腫上であり,近接した腸間膜気腫を認めたが,壊死,穿孔の所見はなく,腸管切除は行わずにドレナージのみとし手術を終了した.術後3日目に施行した腹部CTでは腸管・腸間膜気腫・門脈ガス血症のいずれも改善していた.経口摂取開始後も特に問題なく,術後21病日に退院となった.【考察】腸管気腫症は腸管壁内に多数の含気性小嚢胞が集簇して発生する比較的まれな疾患で,病因として機械説,細菌説,肺原説,化学説などがあげられる.化学説はトリクロロエチレン,α-グルコシターゼ阻害剤,ステロイドなどの投与が原因とされている.炭酸ランタン水和物チュブアル錠の重大な副作用として腸管穿孔,イレウス,消化管出血,消化管潰瘍が挙げられるが,腸管気腫症の報告はなく,本症例の発症に関与した可能性も考えられたため報告した.
索引用語 血液透析, 腸管気腫症