セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

小腸-症例 2

タイトル 外P-470:

小腸膀胱瘻を来した多発小腸憩室の一例

演者 成田 泰子(宮崎県立延岡病院・外科)
共同演者 緒方 健一(宮崎県立延岡病院・外科), 工藤 啓介(宮崎県立延岡病院・外科), 大地 哲史(宮崎県立延岡病院・外科)
抄録 【症例】90代男性,主訴は腹痛・糞尿.平成24年9月上旬に頻尿で近医を受診し,膀胱鏡検査で膀胱への腫瘍浸潤が疑われたため前医へ紹介となった.CTで膀胱直腸窩に濃染を示す病変がみられ,直腸癌もしくは膿瘍を疑われて下部消化管内視鏡検査で直腸Rsまで観察されたが,粗大病変は認めなかった.その後経過観察されていたが9月中旬に糞尿が出現し徐々に全身状態が衰弱したため前医へ入院した.結腸膀胱瘻を疑われ,人工肛門造設目的で当院へ転院となった.入院後の注腸・下部消化管内視鏡検査では直腸から下行結腸にかけて憩室や粗大病変は認めなかった.膀胱鏡検査では膀胱壁に炎症性変化をみとめ,膀胱造影で回腸膀胱瘻と診断した.全身状態が改善した後手術を行ったところ,回腸末端より10cmの位置で膀胱・回腸間に強い炎症性癒着をみとめ,その口側では回腸同士が癒着していた.回腸末端から7cm~40cmの回腸を切除するとともに膀胱部分切除術を行い,手術を終了した.回腸には憩室が散在しており,憩室穿孔による回腸膀胱瘻・回腸回腸瘻・傍直腸部への穿通がみられた.光顕的に憩室は菲薄化した固有筋層を保った真性憩室であった.悪性所見は認めなかった.術後経過は良好で,術後21日目に退院となった.【結語】腸膀胱瘻の原因としては結腸,なかでも結腸憩室炎によるものが多く,小腸膀胱瘻は少ない.小腸膀胱瘻の原因として放射線治療後,Crohn病,腫瘍によるものが比較的多いが小腸憩室によるものは非常に稀であり,本邦にて5例,本邦以外の報告で4例のみである.また消化管憩室症のなかでもMeckel憩室を除いた小腸憩室症の頻度は低く,その発生率は剖検例の0.31%とされ50歳から70歳の男性に多いとされる.多くの症例は無症状で経過するといわれるが6.5~10.4%の症例に出血・穿通・穿孔などの急性腹症を合併するとされ,特に高齢者に好発するため重篤な状態になりやすく,早期の精査加療が必要である.今回,多発性小腸憩室による小腸膀胱瘻を経験し,手術にて良好な結果を得たので報告する.
索引用語 小腸膀胱瘻, 小腸憩室