共同演者 |
宮地 正彦(愛知医大・消化器外科), 山中 美歩(愛知医大・消化器外科), 倉橋 真太郎(愛知医大・消化器外科), 田嶋 久子(愛知医大・消化器外科), 中尾 野生(愛知医大・消化器外科), 藤崎 宏之(愛知医大・消化器外科), 安藤 景一(愛知医大・消化器外科), 清田 義治(愛知医大・消化器外科), 大橋 紀文(愛知医大・消化器外科), 有川 卓(愛知医大・消化器外科), 伊藤 暢宏(愛知医大・消化器外科), 田井中 貴久(愛知医大・消化器外科), 永田 博(愛知医大・消化器外科), 三嶋 秀行(愛知医大・消化器外科), 鈴村 和義(愛知医大・消化器外科), 野浪 敏明(愛知医大・消化器外科) |
抄録 |
症例は54歳男性. 2012年10月, 両側季肋部痛を認め, 当院を受診した. 腹部造影CTにて, 小腸に壁外性発育する50mm大の造影効果を伴う腫瘍と, 腹部大動脈周囲に57mm大のリンパ節を認めた. 小腸内視鏡検査では, トライツ靭帯近傍の空腸に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍を認めた. 同部位より, 生検を施行したが確定診断には至らなかった. 以上より悪性リンパ腫またはgastorointensinal stromal tumor (以下GIST) を疑い, 2012年11月手術を施行した. 開腹すると, トライツ靭帯近傍の空腸に横行結腸間膜と一塊となった手拳大の腫瘍と, 腹部大動脈周囲リンパ節の腫大を認めた. 腫瘍の一部を切除し, 術中迅速病理診断に提出した. その結果, 悪性リンパ腫は否定的ではあるが確定診断には至らないため, 腫瘍とともに空腸と横行結腸間膜の一部と, リンパ節を切除した. 新鮮切除標本所見は, 腫瘍径13×11cm, 割面は灰白色を呈し内腔は壊死しており, 一部に出血を認めた. 病理組織学的検査所見では,免疫染色でKIT陽性・デスミン陰性・S-100蛋白陰性を認め, MIB1 index: 20%, mitosis: 1/50HPFであった. 以上より, リンパ節転移を伴う高リスクの小腸GISTと診断した. 術後早期にイマチニブ 400mg/dayを開始し, 術後4ヶ月現在再発を認めていない. GISTの転移様式は血行性転移がほとんどであり, リンパ節転移は3%と低く稀な転移形式である. また, 本例のような腹部大動脈周囲のリンパ節への転移は極めて稀である. 本例では十二指腸と空腸の移行部に発生したため, 腸間膜内の血管沿いではなく, 腹部大動脈沿いのリンパ節に転移したと推察する. このために悪性リンパ腫との鑑別が困難であった. 今回, 我々は稀な転移形態である, 腹部大動脈周囲リンパ節転移を伴った小腸GISTの1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する. |