共同演者 |
井上 健太郎(関西医大・外科), 松島 英之(関西医大・外科), 向出 裕美(関西医大・外科), 尾崎 岳(関西医大・外科), 道浦 拓(関西医大・外科), 徳原 克治(関西医大・外科), 岩本 慈能(関西医大・外科), 中根 恭司(関西医大・外科), 權 雅憲(関西医大・外科) |
抄録 |
【はじめに】glomus腫瘍は四肢末端に好発する比較的稀な疾患であるが,消化管にも発生することが知られている.しかしその大部分が胃原発であり,小腸に発生するものは極めて稀である.今回,我々は消化管出血を契機に発見され,病理組織学的にglomus腫瘍と判明した症例を経験したので報告する.【症例】65歳,女性.以前から貧血を指摘されるも原因不明にて放置していた.下血を主訴に近医へ救急搬送され,Hb:5.3g/dL, Ht:16.0%と貧血を認め入院となる.上部および下部内視鏡検査にて有意な所見を認めなかった.腹部CTにて小腸壁に腫瘤性陰影を認めたため,精査・化療目的で当院転院となった.カプセル内視鏡にて小腸に腫瘤性陰影あり.ダブルバルーン内視鏡検査にて下部空腸に粘膜下腫瘍を認め,小腸GISTの疑いにて腹腔鏡下小腸部分切除術を施行した.病理組織所見は,拡張が目立つ不整な血管増殖と血管周皮の細胞増殖を認め,間質の浮腫状変化と出血を認めた.分裂像は4個/10HPF程度と多いが異型分裂像は認めなかった.免疫染色ではvimentin, α-SMA, HHF35, type IV collagenが陽性で,desmin, c-Kit, S-100蛋白, podoplanin, CD31, CD56, CD68, AE1/AE3, cytokeratin(CAM5.2), EMAが陰性であった.p53陰性であるがMIB1 index; 15%であった.以上から中間悪性型glomus腫瘍と診断した.術後経過は良好で術後7日目に退院し,術後6ヶ月無再発で経過観察中である.【考察】glomus腫瘍は末梢の血管・神経・筋肉などの総合体(glomus体)から発生し,四肢末端・爪下などに見られる疾患で大部分が良性であるとされる.消化管での発生は稀で,胃glomus腫瘍の報告が散見される程度である.小腸原発glomus腫瘍は極めて稀で,英文報告を小腸2例・十二指腸2例認めるのみである.今回,われわれは小腸原発glomus腫瘍を経験したので文献的考察を加え報告する. |