セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-基礎研究 1

タイトル 外P-516:

樹状細胞癌ワクチン療法を目指した脂肪組織由来幹細胞からのiPS細胞の樹立

演者 松下 典正(東京女子医大・消化器外科)
共同演者 有賀 淳(東京女子医大先端生命医科学研究所), 山本 雅一(東京女子医大・消化器外科)
抄録 【目的】近年幹細胞を用いた再生医療の研究が精力的に進められており,腫瘍免疫の分野でも癌ワクチン療法において重要な役割を果たす樹状細胞を幹細胞から分化誘導させる研究が進められている.今後の臨床応用のためには治療に使用可能な幹細胞の獲得が重要と考えられる.近年体細胞に遺伝子を導入することにより多分化能を有する細胞に変化させるiPS細胞の研究が進められている.iPS細胞作製は体細胞より幹細胞からの方が効率的という報告があり,大腸癌手術の際にリンパ節郭清の目的で摘出される腸間膜の脂肪組織内に認める幹細胞(脂肪組織由来幹細胞: Adipose-derived stem cell(ADSC))をiPS細胞化し樹状細胞誘導の細胞源とすることが可能かを検討するため今回基礎研究を行った.【方法】マウス腸間膜脂肪組織からの細胞採取の至適条件を検討し,その回収された細胞の幹細胞マーカーを測定した.ヒト脂肪幹細胞株を使用しiPS細胞を樹立するための遺伝子導入が可能かならびにiPS細胞化されているかを検討した.【結果】マウス腸間膜より採取した腸間膜脂肪組織をコラゲナーゼ等にて酵素処理を行うことで細胞を採取することが可能であった.回収細胞の表面抗原を測定したところ幹細胞マーカーであるCD29を60.8%発現しており腸間膜脂肪組織からADSCの採取が可能であった.ヒト脂肪幹細胞株にiPS細胞化するための遺伝子OCT3/4, SOX2, KLF4, L-MYCを発現したプラスミドをエレクトロポレーションにて導入しfeeder細胞の存在下で培養したところiPS細胞化を示唆するコロニーが確認された.コロニーの細胞を回収しRT-PCRにてmRNA検索したところiPS細胞化遺伝子が導入されておりADSCからiPS細胞が樹立されていることが確認された.すでにiPS細胞から樹状細胞への分化誘導技術は報告されており本研究結果より腸間膜脂肪組織由来ADSCを用いた癌ワクチン療法の臨床応用が期待された.
索引用語 iPS細胞, 幹細胞