セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-基礎研究 1

タイトル 外P-518:

直腸癌の術前内視鏡下生検組織内におけるリンパ球密度の臨床的意義

演者 関澤 明徳(防衛医大・外科)
共同演者 神藤 英二(防衛医大・外科), 上野 秀樹(防衛医大・外科), 内藤 善久(防衛医大・外科), 識名 敦(防衛医大・外科), 岡本 耕一(防衛医大・外科), 久保 徹(防衛医大・外科), 深澤 智美(防衛医大・外科), 山本 順司(防衛医大・外科), 長谷 和生(防衛医大・外科)
抄録 近年大腸癌の浸潤・発育と生体の腫瘍免疫の反応との関係が注目され,特に細胞障害性Tリンパ球とされるCD8陽性リンパ球に関する研究が数多く報告されている.今回,直腸癌の生検組織におけるCD8陽性リンパ球と制御性Tリンパ球とされるFOXP3陽性リンパ球の密度の,臨床的意義を明らかにすることを目的として検討した.【方法】1997年から2005年に初回手術(CurA)がなされた直腸癌92例(Ra:8例 Rb:84例)を対象に,術前に採取された生検組織に対しFOXP3,CD8の免疫染色を施行.癌胞巣内に浸潤するリンパ球(TIL)の400倍1視野内における数を計測,それぞれ4個を基準として高度(H)群と軽度(L)群に分類し,臨床病理学的因子や予後との相関について検討した.【結果】1) 臨床病理学的因子との相関:CD8陽性リンパ球の多寡と,年齢・性別・組織型・リンパ管侵襲・静脈侵襲・深達度との間に相関は認めなかった.リンパ節転移は,H群(24%)がL群(61%)に対し有意に低率であった(p=0.0006).一方,FOXP3陽性リンパ球の多寡と年齢・性別・組織型・深達度・リンパ管侵襲・リンパ節転移率との間に相関は認めなかった.静脈侵襲(v1以上)はH群(67%)がL群(89%)に対し有意に低率であった(p=0.03).2)生存率:CD8陽性リンパ球の検討から,H群の5年無再発生存率(85%)はL群(62%)に対し,有意に高率であった(p=0.04).5年全生存率においてもH群(5年OS:87%)はL群(66%)に対し,有意に高率であった(p=0.028).FOXP3陽性リンパ球については,いずれも有意差を認めなかった.【結論】直腸癌の生検検体におけるCD8陽性リンパ球数の高度浸潤症例で,リンパ節転移率が低く,生存率が良好であり,リンパ球密度の予後因子としての有用性が示された.
索引用語 CD8, FOXP3