セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-症例 1

タイトル 外P-527:

下腸間膜静脈内腫瘍栓を伴うS状結腸癌の1例

演者 花井 雅志(みよし市民病院・外科)
共同演者 土江 健嗣(みよし市民病院・外科)
抄録 肝細胞癌や腎癌ではしばしば静脈内に腫瘍栓を形成することが知られているが,大腸癌において主幹静脈に腫瘍栓を形成する進展様式は稀である.今回,われわれは下腸間膜静脈内に腫瘍栓を伴うS状結腸癌の1例を経験したので報告する.
症例は65歳,女性.2週間程前から頻回の軟便と下腹痛のため当院を受診.大腸内視鏡検査で肛門縁から25cm~35cmのS状結腸に半周性2型腫瘍を認め,生検結果は中分化型管状腺癌であった.dynamic CTで腫瘍は腸間膜側に存在し,これに連続するように腸間膜の肥厚を認めた.肝転移や門脈内腫瘍栓は認めなかったが,下腸間膜静脈は腫瘍から下腸間膜動脈根部と同じ高さまで拡張し,空腸起始部と同じ高さまで内部に低吸収域を含んでいたため,低吸収域は下腸間膜静脈内腫瘍栓と考えた.CT angiograghyでは辺縁静脈が側副血行路として発達しているのが確認できた.手術は開腹すると最初に下腸間膜静脈を検索した.下腸間膜静脈はCTの如く空腸起始部近傍の高さまで硬結を認め腫瘍栓と判断した.はじめに下腸間膜静脈を硬結から1cm肝側で切離し,その後にS状結腸切除術+D3を施行した.側副血行路になっている辺縁静脈も容易に同定でき損傷は免れた.病理組織診はpSS,pN1,pStage3aで,下腸間膜静脈内には腸管から連続した腫瘍栓を認めた.R0ではあるが肝転移のリスクが高いため補助化学療法を勧めているが,患者の同意が得られず施行できていない.術後3ヵ月の現在,厳重に経過観察をしており再発・転移は認めていない.
医学中央雑誌で腸間膜静脈内腫瘍栓を伴う大腸癌を検索すると本邦報告例はわずか18例であり(会議録を除く),そのうち下腸間膜静脈内腫瘍栓の報告例は9例であった.自験例を含めそれらを集計し文献的考察も加え報告する.
索引用語 腸間膜静脈内腫瘍栓, 大腸癌