セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-症例 1

タイトル 外P-530:

脳梗塞で入院中,腹痛の精査で大腸癌イレウスと診断されたTrousseau症候群の1例

演者 野間 浩介(広島共立病院・外科)
共同演者 迫川 賢士(広島共立病院・外科), 大田垣 純(広島共立病院・外科), 高永甲 文男(広島共立病院・外科), 青木 克明(広島共立病院・外科)
抄録 担癌状態では血液凝固系の亢進が認められるが多く,それに伴い脳血管障害を発症することも報告されている.悪性腫瘍の診断に先立って発症する原因不明の血栓症をTrousseau症候群と定義されている.今回われわれは,左下肢麻痺にて脳外科医院入院中腹痛の訴えあり,精査にて大腸癌イレウスと診断されたTrousseau症候群の1例を経験したので報告する.症例は59歳男性.基礎疾患として心房細動,高血圧症,糖尿病がある.歩行中に突然左下肢が動かなくなり脳神経外科医院を受診.MRIにて右前頭葉,右頭頂葉内側の梗塞を指摘され入院.心房細動からの塞栓と考えられたためリバーロキサバンの内服が開始された.左下肢麻痺は数日で回復したが入院中に強い腹痛が出現したため精査加療目的で当院紹介となった.腹部CT検査で著明な腸管の拡張を認めた.その原因として左結腸に腫瘤を認め,大腸癌によるイレウスと診断した.大腸内視鏡検査ではS状結腸に内視鏡通過不能の全周性の腫瘍を認めた.イレウス管を挿入し腸管減圧を行ったが,その効果が不十分なまま手術となった.閉塞部位より口側の結腸の拡張がとれていなかったためS状結腸切除,人工肛門造設術を行った.病理診断結果はtub2 SSn1H0P0であった.術前血液凝固マーカー(D-dimer,FDP)は高値であったが,腫瘍切除後改善が認められた.心房細動にともなう血栓予防のため術後ワルファリンの内服を開始した.消化器癌,特に進行癌ではTrousseau症候群を合併することがあり,その発症後は予後不良といわれている.原疾患の進行度によっては切除が困難な場合もある.本症例では原発巣切除により血液凝固系が改善し良好な経過をたどっているが,心房細動を併存しているため抗凝固療法が必要となる.標準的な治療としheparin静注による抗凝固療法があるが,消化器癌では消化管出血の危険から困難なことも多い.進行癌患者に対て,重篤な合併症の一つとしてTrousseau症候群を念頭において加療する必要がある.
索引用語 Trousseau症候群, 悪性腫瘍