セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-症例 3

タイトル 外P-539:

術後早期に孤立性脳転移をきたした盲腸癌の1例

演者 東 幸宏(静岡市立清水病院・外科)
共同演者 石川 慎太郎(静岡市立清水病院・外科), 川村 崇文(静岡市立清水病院・外科), 片橋 一人(静岡市立清水病院・外科), 土屋 博紀(静岡市立清水病院・外科), 小路 毅(静岡市立清水病院・外科), 山崎 将典(静岡市立清水病院・外科), 谷口 正美(静岡市立清水病院・外科), 西山 雷祐(静岡市立清水病院・外科), 丸尾 啓敏(静岡市立清水病院・外科)
抄録 症例は80歳代の女性.全身の浮腫と貧血のため当院内科に初診となる.下部消化管内視鏡検査で,盲腸を主座とする最大径50mmの2型の腫瘍を認め,生検で中分化型腺癌と診断された.胸部腹部CTでは,盲腸から上行結腸にかけての巨大な腫瘍を認めるものの肝,肺に遠隔転移は認めなかった.回盲部切除術+D2郭清を施行した.病理所見により,C,2型,90×80mm,mod, pSS,ow(-),aw(-),ew(-),v1,ly1,pN0と診断された.術後3カ月経過したのち,右半身の脱力を自覚し,当院の脳神経外科を受診した.頭部造影CTで左前頂葉の皮髄境界部にφ25mmのリング状濃染を呈する腫瘤を認め周囲には強い浮腫による低吸収域の広がりを認めた.頭部MRIにおいても同部位に30mm×20mmの造影後にリング状に染まる陰影を認めた.3カ月前に転倒による頭部外傷のため撮影していた頭部CTでは転移性脳腫瘍は認めなかったため盲腸癌術後早期の孤立性脳転移と診断した.脳浮腫改善ののち開頭腫瘍摘出術を施行した.切除標本の病理診断においても中分化型腺癌由来の転移性脳腫瘍と診断された.術後に重大な神経症状をきたすことはなく39.6Gy/33の全脳照射施行ののち軽快退院した.回盲部切除術後6カ月経過した現在まで新たな脳転移ほか肝,肺,リンパ節,腹膜などに再発所見は認めず外来で経過観察中である.大腸癌原発の転移性脳腫瘍は,血行性転移と考えられ,直腸静脈叢から下行静脈,肺を経由し脳に至る経路,門脈から肝,肺を経由し脳に至る経路,椎骨静脈叢から脳に至る経路の3経路があげられる.本症例においては肝,肺に転移を認めないことから椎骨静脈叢から脳に至る経路が最も考えられた.原発巣切除後の大腸癌孤立性脳転移は,われわれの検索した限り本邦において自験例を含めて10数例の報告があるのみである.若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 転移性脳腫瘍, 大腸癌