セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-症例 3

タイトル 外P-541:

気腫性胆嚢炎にて発症したびまん浸潤型直腸癌の一例

演者 前田 杏梨(聖隷浜松病院・外科)
共同演者 本間 陽一郎(聖隷浜松病院・外科), 小林 靖幸(聖隷浜松病院・外科), 大月 寛郎(聖隷浜松病院・病理診断科), 町田 浩道(聖隷浜松病院・外科)
抄録 【はじめに】一時的な救命目的で気腫性胆嚢炎に対して緊急手術を行った.術中では確定診断がつかず,剖検を行うことで初めて診断に至った,びまん浸潤型直腸癌の1例を経験した.【症例】88歳男性.突然の嘔吐,黒色便を主訴として来院.貧血と凝固障害を認めたため,緊急上部内視鏡検査を施行したが明らかな出血源は認めなかった.保存的加療にて症状は軽快した.CA19-9の異常高値を認めたため,膵頭部癌による十二指腸壁外からの浸潤が考えられた.入院4日目の血液検査にて炎症反応が高度に上昇し,造影CTで気腫性胆嚢炎を認めたため,緊急胆嚢摘出術を施行した.胆嚢は壊疽性変化を認め,組織学的には明らかな悪性所見は見られなかった.十二指腸は壁の硬化があり,肝十二指腸間膜,後腹膜が肥厚していた.小腸間膜にも肥厚を認めた.救命を優先し,組織生検目的の腸管切除は施行しなかった.術中所見からは,後腹膜へ浸潤する何らかの悪性腫瘍によって胆嚢管が狭窄し気腫性胆嚢炎,汎発性腹膜炎を起こした可能性が考えられた.術後7日目よりドレーンからの胆汁漏を認めた.原因として肝十二指腸間膜に浸潤する悪性腫瘍による下部胆管狭窄を疑った.逆行性胆管ドレナージを試みるも,十二指腸球後部から下行脚にかけて変形狭窄があり,胆管に到達することができなかった.胆管狭窄,十二指腸狭窄のさらなる進行が認められ,組織学的にも原因疾患は特定できないまま悪液質状態となり,術後約2か月後に死亡に至った.剖検にて直腸から低分化型腺癌が検出され,びまん浸潤型直腸癌と診断された.癌が後腹膜に浸潤し,胆嚢管近傍への浸潤による胆汁流出障害が原因で胆嚢炎や胆汁漏の遷延を引き起こした可能性が考えられた.【考察】びまん浸潤型直腸癌の後腹膜,腸間膜浸潤は非常に稀であり,さらに腹膜播種を認めず胆管狭窄をきたした報告例はない.原因不明の消化管狭窄を認めた場合,びまん浸潤型直腸癌の可能性も考慮し,可能な範囲で全身検索を行う必要がある.
索引用語 びまん浸潤型直腸癌, 後腹膜浸潤