セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-症例 3

タイトル 外P-542:

切除不能多発肺転移・単発肝転移伴う多発大腸癌に対してCetuximab+ mFOLFOX6治療先行によりR0切除可能であった1例

演者 竹下 浩明(長崎大・腫瘍外科)
共同演者 澤井 照光(長崎大・腫瘍外科), 黨 和夫(長崎大・腫瘍外科), 富永 哲郎(長崎大・腫瘍外科), 荒井 淳一(長崎大・腫瘍外科), 國崎 真己(長崎大・腫瘍外科), 阿保 貴章(長崎大・腫瘍外科), 日高 重和(長崎大・腫瘍外科), 七島 篤志(長崎大・腫瘍外科), 永安 武(長崎大・腫瘍外科)
抄録 大腸癌術後補助化学療法では無再発生存率の向上が得られ,”微小な”転移巣の消失が示唆される.切除不能な多発肺転移と単発肝転移を伴う多発大腸癌症例に対して,”小さな”多発肺転移巣の消失を目的としてCetuximab+mFOLFOX6による化学療法を先行し,肺転移巣の画像的消失を確認後,R0切除を行いえた示唆的な1例を経験した.63歳,男性.貧血を指摘され内視鏡にてS状結腸癌がみつかり,胸腹部造影CTにて肝S7に53mm大の単発肝転移,両肺に2~8mmの転移巣が10個みられた.肝弯曲部横行結腸癌も併存していた.腹膜播種の所見はなく,原発巣は切除可能であったが,早期の転移巣のコントロール目的に初回治療としてCetuximab+mFOLFOX6を開始した.8コース時にCEAが598.7→10.9ng/mlと最低となり,肺,肝転移巣ともに縮小したが,肺転移巣は画像的に残存していた.12コース終了時に肺転移巣の画像的消失が確認され,肝S7亜区域切除,結腸右半切除,S状結腸切除,リンパ節郭清を行った.病理では原発巣はviableな腫瘍細胞の残存がみられたが,肝転移巣およびリンパ節転移巣は粘液のみ残存し腫瘍細胞を認めなかった.術後間質性肺炎がみられるも軽症だった.CEAは正常化し補助療法としてUFT/LVを6カ月行い,術後9カ月経過し無再発生存中である.2012年ESMOガイドラインでは,大腸癌患者をGroup0~3に分類し適切な化学療法を推奨している.Group1は化学療法により縮小すれば切除が狙える患者,Group3は化学療法の効果があっても切除可能となる見込みのない患者を指す.本例は,肺転移が多発でありGroup3と判断すれば副作用の少ないレジメンを選択する可能性があった.しかし,補助療法の概念からは,微小な転移巣は化学療法で消失する可能性があることから,本例をGroup1としてとらえ,結果としてR0切除が可能であった.Group1とGroup3の境界は判断が分かれる場合があり今後の課題である.
索引用語 cetuximab, conversion