セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-症例 4

タイトル 外P-548:

急性虫垂炎と初期診断されたLynch症候群の一例

演者 池邉 孝(東住吉森本病院・救急・総合診療部)
共同演者 寺倉 政伸(合志病院・外科), 眞弓 勝志(合志病院・外科), 金沢 源一(東住吉森本病院・外科), 清田 誠志(東住吉森本病院・外科), 酒部 克(東住吉森本病院・外科), 形部 憲(東住吉森本病院・外科), 伊藤 得路(東住吉森本病院・外科), 森本 義彦(東住吉森本病院・外科), 田中 宏(東住吉森本病院・外科), 堀 高明(兵庫医大・外科(上部消化管外科)), 竹村 雅至(兵庫医大・外科(上部消化管外科)), 濱野 玄弥(大阪市立大・肝胆膵外科), 西岡 孝芳(大阪市立大・肝胆膵外科)
抄録 遺伝性非腺腫性大腸癌(以下HNPCC)は常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性腫瘍で,遺伝子の変異が明らかとなった場合Lynch症候群と呼称される.今回詳細な家族歴の聴取と遺伝子学的検査で明らかとなったLynch症候群の一例を経験したので報告する.【症例】29歳,女性.【主訴】右下腹部痛.【家族歴】姉胃癌30代死亡.母親40代卵巣癌発症,50代子宮癌で死亡.母方の祖父大腸癌70代で死亡.その他,母親の兄弟は6人中5人が何らかの癌に罹患していた.【現病歴】2010年10月,右下腹部痛を主訴に近医を受診,急性虫垂炎の疑いで紹介受診.【現症】発熱なく,右下腹部に圧痛をみとめたが腹膜刺激症状なし.【血液検査】白血球6900,CRP0.8で炎症反応の亢進なし.【腹部単純CT】盲腸壁の肥厚と傍結腸リンパ節の腫脹をみとめた. 【PET-CT】盲腸と傍結腸リンパ節にFDGの異常集積を認めた.【大腸内視鏡検査】盲腸後壁に3型の腫瘤をみとめ,生検tub2,Group5で盲腸癌と診断した.【手術】腹腔鏡下右半結腸切除およびD3郭清を施行した(Stage IIIa,根治度A).【経過】家族歴からHNPCCと診断したが,後の遺伝子学的検査でMLH1遺伝子に変異をみとめ,Lynch症候群であることが明らかとなった.術後2年半現在再発なく経過良好.【考察】本症例はHNPCCの診断基準であるAmsterdam criteria IIを全て満たしていた.今回,急性虫垂炎と初期診断されており,詳細な家族歴の聴取がなければ本症が発見されなかった可能性もあった.若年の癌疾患に遭遇した際は詳細な家族歴を聴取することでHNPCC家系を見逃さないことが重要であると思われた.
索引用語 遺伝性非腺腫性大腸癌, Lynch症候群