共同演者 |
谷 眞至(和歌山県立医大・2外科), 川井 学(和歌山県立医大・2外科), 岡田 健一(和歌山県立医大・2外科), 宮澤 基樹(和歌山県立医大・2外科), 清水 敦史(和歌山県立医大・2外科), 上野 昌樹(和歌山県立医大・2外科), 速水 晋也(和歌山県立医大・2外科), 山上 裕機(和歌山県立医大・2外科) |
抄録 |
[背景]2012年に新しいIPMNコンセンサス診療ガイドラインが出版され,新たなIPMN手術適応が明らかにされた.今回われわれは,新ガイドラインに基づいてIPMN切除症例を検証し,今後の課題を提唱したい.[方法]1999年~2013年までに当科で切除したIPMN218例を対象に,新ガイドラインに沿った主膵管型および分枝型の良悪性診断率,さらにIPMN由来浸潤癌の予後因子を同定した.[結果]主膵管型IPMN52例(腺腫20例,非浸潤癌18例,浸潤癌15例)のうち新ガイドラインにおける悪性high-risk stigmataの主膵管径≧10mmで良悪性鑑別すると,sensitivity 76%, specificity 67%, accuracy 73%であった.主膵管径10mm未満の悪性症例を7例認め,今後はこれらの症例を鑑別できる新たな悪性因子の同定が必要である.分枝型IPMN166例(腺腫61例,非浸潤癌55例,浸潤癌50例)のうち,新ガイドラインの悪性high-risk stigmataである黄疸,主膵管径≧10mm,壁在結節で良悪性鑑別を行うとsensitivity 77%, specificity 66%, accuracy 73%であった.一方当科分枝型IPMNを用いた多変量解析で,独立した悪性因子であった膵液CEA>30ng/mlと壁在結節径>5mmでは,sensitivity 82%, specificity 97%, accuracy 86%と良好な成績であった.術後再発は36例(17%)に認め,再発形式は局所21例,肝10例,腹膜8例,肺8例の順に多かった.残膵再発症例は5例認め,残膵に通常型膵癌を認めた症例は3例であった.残膵再発と初回切除断端異型度とは相関を認めなかった(P=0.2).浸潤癌のdisease-specific survivalは,腺腫および非浸潤癌より有意に不良(P<0.01)で,浸潤癌症例65例の独立した予後不良因子は,前方浸潤(P=0.02),動脈浸潤(P<0.01),リンパ節転移(P=0.04)であった.[結語]IPMN由来浸潤癌は予後不良であり,非浸潤癌の時点での切除が重要である.新ガイドラインの手術適応基準では非浸潤癌症例が見落とされる傾向にあり,新規悪性因子の導入が必要である. |