セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

膵臓-診断 3

タイトル 外P-570:

膵癌との鑑別が困難であった,IgG4非関連自己免疫性膵炎

演者 小山田 尚(国立水戸医療センター・外科)
共同演者 小泉 雅典(国立水戸医療センター・外科), 小林 仁存(国立水戸医療センター・外科), 湯沢 賢治(国立水戸医療センター・外科), 寺島 徹(国立水戸医療センター・外科), 小崎 浩一(国立水戸医療センター・外科), 加藤 丈人(国立水戸医療センター・外科), 米山 智(国立水戸医療センター・外科), 植木 浜一(国立水戸医療センター・外科)
抄録 膵癌との鑑別を要した,IgG,IgG4値が正常である自己免疫性膵炎(AIP)の症例を経験したので報告する.症例は81歳女性.2012年7月に上腹部不快感を主訴に近医受診,精査を受けたが,食道裂孔ヘルニアの診断となり,投薬を受けて軽快した.そのフォロー中に胆管,膵管の拡張を認めたため,当院紹介となった.初診時は症状なく,炎症所見,血清アミラーゼの上昇や黄疸もなかった.画像診断では,CT,MRIにて再現性に乏しいものの,膵頭部に1.8cmほどの乏血性の腫瘍を認め,ERCP,MRCPにても同部位にて膵管,胆管の途絶を認めた.膵胆管の拡張は進行していた.腫瘍マーカーはCEA,CA19-9いずれも陰性.IgG,IgG4ともに正常値であった.膵頭部癌の診断にて2013年1月に幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.膵臓は全体的に腫大がなく委縮性で,膵頭部が固くなっていたものの,切除標本にて膵頭部の胆管,膵管の狭窄部位に肉眼的な腫瘍は認められなかった.術後経過は良好にて22術日に退院,現在も問題なく外来通院中となっている. 切除標本の病理組織診断では異型細胞は認めず,膵管の周囲にリンパ球浸潤を認めるとともに,膵管内および膵管上皮内に好中球浸潤を認めた.免疫染色ではIgG陽性細胞は膵管周囲に集中しているもののIgG4陽性細胞はわずかであり,IgG4非関連自己免疫性膵炎と診断された. 自己免疫性膵炎は度々膵癌との鑑別を要するが,欧米とは違い本邦ではIgG,IgG4が高値を示すIgG4関連の自己免疫性膵炎(AIP type1)がほとんどであり本症例のようなidiopathic duct-centric pancreatitis(AIP,type2)は稀である.本症例では膵臓の棍棒状の腫大など,典型的な自己免疫性膵炎の所見は見られなかったが,自己免疫性膵炎と膵癌の鑑別が必要な場合には本症例のようなAIP ,Type2の存在も念頭に置いて,安易にIgG4値のみで診断を下すのではなく,組織学的な検査もしくはPETなどを行うべきと考えられた.
索引用語 自己免疫性膵炎, 膵頭十二指腸切除