抄録 |
【背景】今回,当院の膵切除症例の治療成績について検討した.【対象】1994年~2012年までに切除したPNET31例.【結果】年齢24~77歳,平均52歳,男性17例,女性14例.機能性(F)11例,非機能性(NF)20例,MEN1合併4例,VHL病合併3例.多発4例,組織学的に悪性と診断されたものは19例(F6例,NF13例).同時性肝転移,リンパ節転移は各々3例(F1例,NF2例),8例(F3例,NF5例).平均腫瘍径は,良性例1.7cm,悪性例3.8cm,同時肝転移症例4.2cm,リンパ節転移症例5.7cm.リンパ節転移は#16転移を認めた1例以外すべて1群までの転移であった.切除術式は膵部分切除(核出) 5例,PPPD 5例,DP 15例,脾温存DP(SPDP) 2例,Appleby法1例,TP 2例,脾温存TP(SPTP)1例.郭清を伴わない膵部分切除(核出),SPDP,SPTPを縮小手術とし原則2cm以下に行われた.部分切除(核出)の平均手術時間(分)/平均出血量(g)/平均術後在院日数(日)は298/108/32,標準手術の459/586/35と比し手術時間と出血量の減少を認めたが術後在院日数で差を認めなかった.SPDPとDPではそれぞれ422/440/29,282/403/32と縮小手術で手術時間の延長を,SPTPとTPではそれぞれ432/730/28,534/1360/22と縮小手術で手術時間の短縮と出血量の減少を認めた.術後膵液漏や腹腔内膿瘍などの合併症は縮小手術で8例中3例,標準手術で23例中9例に認め差を認めなかった.予後は縮小手術では8例中2例に再発を認めたが全例生存しており,標準手術では23例中5例に再発を認め,同時性肝転移を認めた2例以外は全例生存している.【考察】当科では機能性の有無と腫瘍サイズから手術適応を決めており,2cm以下のインスリノーマと1~2cmの非機能性腫瘍では郭清を省いた縮小手術が可能と考えている.今後,出血量・術後在院日数のさらなる改善が図れると思われるが,さらなる症例の蓄積が必要と考えている. |