セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

膵臓-手術治療 3

タイトル 外P-588:

膵全摘術の治療成績

演者 前田 徹也(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科)
共同演者 土屋 勝(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科), 石井 淳(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科), 吉野 翔(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科), 尾作 忠知(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科), 鏡 哲(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科), 久保田 喜久(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科), 田村 晃(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科), 大塚 由一郎(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科), 金子 弘真(東邦大医療センター大森病院・消化器センター外科)
抄録 【目的】膵全摘術は,術後に生活の質が低下することなどから避けられる傾向にあったが,近年は手術手技の向上や周術期管理の改善などから,比較的安全に施行されるようになってきた.これまでの当科で施行した膵全摘術について検討した.
【対象と方法】2006年4月から2012年12月の間に,当教室で施行した膵全摘術11例(膵癌5例,膵管内乳頭粘液性腫瘍4例,膵転移2例)を対象とし,手術内容や術後経過を中心に検討を加えた.
【結果】年齢は66.5±9.3歳,男女比は5:6で,腫瘍局在は膵多発もしくは全体病変が8例,体部癌+下部胆管癌が1例,術後残膵に生じた例が2例であった.術式は,膵全摘4例,門脈合併切除を伴った膵全摘5例,残膵全摘2例で,手術時間は504.1±75.5分,出血量は1686.6±1948.9mlであった.術後は膵性糖尿病を10例全例に認めたが,インスリン投与により安全なコントロールが可能で,退院時のHbA1c値は6.7±0.37%であった.その他に胃運動排泄遅延を3例,潰瘍性大腸炎の発症を1例,消化管出血を1例に認めたが,重篤な合併症は認めず,術後在院期間は42.9±13.9日であった.原病死は2例,他病死は1例で,その他の症例はインスリン自己注射を行い外来経過観察中である.
【考察】膵全摘術後は二次性糖尿病が必発であり,加えて消化吸収障害や栄養代謝障害なども来す可能性が考えられる.よってインスリン注射管理が必須となり,不安定な血糖や栄養管理から社会復帰が困難となることが危惧され,膵全摘術に対しては否定的な意見も少なくない.しかし一方で,根治性の追求のため膵全摘術を施行せざるを得ない状況に遭遇することがある.膵全摘術の適応は患者背景などへの充分な配慮が必要で慎重にならなければならないが,充分な周術期管理を行うことにより耐術可能であり,膵全摘術による予後改善への期待が示唆された.今後,長期に渡る慎重な経過観察が必要と思われる.
索引用語 膵全摘, 膵腫瘍