セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

胃-化学療法・集学的治療 1

タイトル 外P-606:

胃癌組織におけるHER2発現判定の問題点

演者 楠本 哲也(九州大・消化器総合外科DELIMITER国立九州医療センター・臨床研究センター)
共同演者 安藤 幸滋(九州大・消化器総合外科), 井田 智(九州大・消化器総合外科), 木村 和恵(九州大・消化器総合外科DELIMITER国立九州医療センター・外科), 佐伯 浩司(九州大・消化器総合外科), 沖 英次(九州大・消化器総合外科), 森田 勝(九州大・消化器総合外科), 前原 喜彦(九州大・消化器総合外科)
抄録 【背景と目的】ToGA試験の結果を受けて胃癌治療戦略上HER2判定が重要となった.胃癌におけるHER2発現の臨床的意義と問題点を明らかにするために,HER2過剰発現とその遺伝子増幅を判定解析し結果の再現性を検討した.【対象と方法】1) 2003年~2007年に切除された胃癌198症例を対象としてHER2発現と遺伝子増幅を各々免疫組織化学染色(IHC)法とFISH法で解析した.IHC法はA: Her/neu(Dako:用手法),B: Hercep Test(Dako:自動免疫染色),C: 4B5(Ventana:自動免疫染色)にて198例に,FISH法はA法で2+以上の胃癌組織49例に行った.2) 標本固定までの至適時間の検討のために,切除胃から採取された胃癌組織を直ちに4分割し,各々0, 1, 2, 3時間後に固定開始した.各組織のHER2発現をC法で行い比較した.【結果】1) 染色方法別(A/B/C)にみたHER2 scoreの症例数はscore0: 101/176/175例, 1+: 49/6/7例, 2+: 28/9/5例, 3+: 21/7/12例で,抗体の種類や手技によってHER2陽性率は異なった. FISH法では,+/-/評価不能が各々12/27/10例で,評価可能な39例について上記A,B,C法の結果と比較すると,A: IHC score 3+ (21例)の12例(57%)がFISH(+), score 2+で全例陰性,B: 3+は全例陽性,2+中3例が陽性,C: 3+の12例中11例が陽性,2+は全例陰性.以上からFISH法の結果を併せても上記IHC法の相違が解消されなかった.これらの結果と病理組織学的因子の比較では,IHC score3+例で高分化が62%(13/21),中分化が19%(4/21),低分化が19%(4/21)であった.2) 現在までに13例について検討したところ,HER2陽性例は3例(23%),固定までの時間で染色性に違いは少なかった.【考察】FISH(+)はIHC score3+とほぼ相関していた.HER2陽性は高分化型に多いことが確認されたが,HER2判定は抗体によって異なることも示された.さらにHER2診断の精度を高め,その結果とトラスツズマブ使用症例の臨床効果の確認が必要である.
索引用語 胃癌, HER2