共同演者 |
石井 俊一(かしま病院・外科), 鈴木 正明(かしま病院・外科), 小野 靖之(かしま病院・内科), 全田 貞雄(かしま病院・内科), 佐藤 法子(かしま病院・看護部), 菅波 由紀(かしま病院・看護部), 滝 正子(かしま病院・看護部), 渡邊 英子(かしま病院・看護部) |
抄録 |
【目的】経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)後の早期死亡に関わる術前の因子について検討した.【対象と方法】対象は2004年1月~2012年12月までに,当院にてPEGを施行した287例.年齢は31~99歳,平均79.3歳(中央値81歳),男性141例,女性146例.PEGはPull法で行い,各項目につき後ろ向きコホート解析を行った.【成績】症例全体の観察期間は平均400.6日で,生存114例,死亡173例であった.生存期間中央値は363日で,累積生存率は1年生存率49.6%,2年生存率35.6%,3年生存率26.3%であった.PEG後30日以内の早期死亡は26例(9.1%)に認められた.内訳は男性17例,女性9例,平均年齢77.2歳で,死亡原因は肺炎・呼吸不全16例(61.5%),老衰・衰弱5例(19.2%),うっ血性心不全2例(7.7%),ショック,敗血症が1例(3.8%)ずつであった.また,15例(57.7%)は突然容態が悪化し,数日以内に死亡するという経過をたどった.早期死亡に関わる術前の危険因子は,単変量解析の結果,心疾患の既往,血清中のプレアルブミン,CRP,コリンエステラーゼが有意であった.これらの多変量解析では,心疾患の既往(オッズ比:29.3 95%信頼区間:8.56-100.21 p<0.001),CRP 1.5mg/dl(中央値)以上(オッズ比:3.7 95%信頼区間:1.05-12.73 p=0.042)が有意となり,独立した危険因子として挙げられた.【結論】PEG症例の9.1%という高い確率で30日以内の早期死亡を認めた.早期死亡の約半数で,心肺停止状態で発見されたり,予想外の状態悪化により数日以内に亡くなっていた.早期死亡の死亡原因の多くは呼吸不全や肺炎であり,術後の誤嚥の予防や胃食道逆流防止対策,アンジオテンシン変換酵素阻害剤の投与や徹底した口腔ケアなどが重要と考えた.早期死亡に関わる因子としては,心疾患の既往および術前のCRPが危険因子として抽出され,PEGを行う上で心機能が悪い症例や活動性の炎症を伴う症例には,実施を考慮する必要があると考えた. |