セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

胃-その他

タイトル 外P-636:

消化器外科医が行うESD   消化器外科からの応用,また,ESDから学んだこと

演者 小原 弘嗣(藤枝平成記念病院・外科)
共同演者 増田 靖彦(藤枝平成記念病院・外科)
抄録 当院では,外科医がESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を施行している.現在では,手技も確立し,施行時間73.5分,一括切除率100.0%,治癒切除率97.5%と成績の向上が認められ,また,再発は1例もなく,良好な成績を治めているので,ESDから学び取ったことも含め報告する.症例は140例で,内訳は,食道癌4例,胃癌37例,胃腺腫26例,大腸癌15例,大腸腺腫36例,その他22例であった.腫瘍の平均径は,19.1 ± 6.5cmで,標本径は,30.2 ± 8.7cmであった.初期は,腹腔鏡下胆嚢摘出術の技術を応用して,フックナイフを用い直視下での処置に徹した.その後,粘膜下層は血管で構築される解剖が把握できるようになり,ITナイフ2を使用するようになり,最近では,SBナイフジュニアを用いることにより,大腸疾患においても,穿孔の危険を減らし,安全に施行できるようになった.穿孔に関しては,初期の症例で,7例に経験し,うち4例に緊急手術を要したが,幸い,3例は,あらかじめ手術室で施行しており,緊急手術で早期に対処できた.保存的治療に固執するあまり,患者を危険に至らしめることはなかった.また,食道癌のおよび,胃上部小弯側(1番リンパ節の廓清の際の血管処理と同じように根気が必要)の血管が豊富な部位は,手術室で,経鼻挿管下で施行し,安定した術野のもと,丁寧な血管処理を行うことができた.ただ,1例,当初,ESD後の再発と考えられた直腸癌を経験した.K-ras遺伝子の不一致から,3mmの微小病変を原発巣とする4型の早期癌類似進行癌と判明した.低位前方切除が施行されていたら,切除部位に含まれていた症例であった.臓器温存のため,新たな大腸癌のリスクを背負うこととなった教訓的な1例であった.本来,内科医が施行するため,開腹移行に際しては,主治医の交代が必要となるが,そのような必要はなく,また,施行当初は,多くの外科的な手技の応用から始めることができた.また,小弯側の処理から学んだことより,開腹手術の際には,あらたな目線から解剖を把握することができた.
索引用語 ESD, 穿孔