セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

胃-基礎研究 1

タイトル 外P-640:

Affymetrixマイクロアレイを用いたリンパ節転移進展に関わる包括的遺伝子発現探索 ― Nkx2.1-EGFR axis の同定と治療標的の可能性

演者 江間 玲(北里大・外科)
共同演者 山下 継史(北里大・外科), 藁谷 美奈(北里大・外科), 渡邊 昌彦(北里大・外科)
抄録 【背景】lymph node ratioは,郭清リンパ節に対する転移リンパ節の割合(転移密度)を表し,胃癌において強い予後因子として知られるようになった.しかし,この特有な表現型と関連し,原因と考えられる分子は未だ同定されていない.われわれは,マイクロアレイを用いてこのような分子を同定し,悪性度の高い胃癌の治療戦略を探索している.【対象と方法】stage III進行胃癌腫瘍検体でlymph node ratioが高い患者(n=4)と低い患者(n=4)に対して,54,675の遺伝子からなるAffymetrixマイクロアレイを用い,mRNAレベルでの発現の違いを検討した.同定した遺伝子EGFRについて原発性進行胃癌(n=167)におけるlymph node ratioとの相関を検証し予後的意義の解明を行った.【結果】(1)マイクロアレイにて発現に差を認めた遺伝子候補は,LOC283352,Nkx2.1,CHST9,CTNND2,SLC25A27,FGFR2,EGFR,PTGER1等であり,癌における遺伝子増殖で知られるものが多かった.(2)これらの中でEGFRに対して167例の進行胃癌の組織検体を免疫組織化学染色(IHC)により発現の有無を調べた.ANOVAでは,EGFR発現IHC 2+/3+とIHC 1+の間に強い相関が認められた(p=0.0035).(3)χ二乗検定では,lymph node ratio 35%以上とIHC 2+/3+とIHC 1+の間で強い差を認めた(p=0.0023).5年RFSの予後解析は,EGFR発現IHC 2+/3+(p=0.039)とlymph node ratio 35%以上(p=0.001)は各々予後不良であった.悪性度の高いlymph node ratio 35%以上の進行胃癌19例中18例が,EGFR高発現を認め,この分子を標的とした治療開発が有望と考えられた.(4)EGFRと相関する発現を示すNkx2.1は,ステージ進行に伴い,高頻度の遺伝子増幅を示し,そのタンパクは腹膜播種病変に特異的に強発現し,また未分化癌に特徴的な発現パターンを呈した.【結語】進行胃癌において,高悪性度を説明する分子機構候補としてEGFRを同定した.標準治療抵抗性のある胃癌に対して,EGFRは最も有望な分子標的の一つと考えられた.
索引用語 EGFR, lymph node ratio