共同演者 |
田中 光司(三重大大学院・消化管・小児外科学), 志村 匡信(三重大大学院・消化管・小児外科学), 北嶋 貴仁(三重大大学院・消化管・小児外科学), 近藤 哲(三重大大学院・消化管・小児外科学), 奥川 喜永(三重大大学院・消化管・小児外科学), 問山 裕二(三重大大学院・消化管・小児外科学), 大井 正貴(三重大大学院・消化管・小児外科学), 石野 義人(三重大大学院・消化管・小児外科学), 安田 裕美(三重大大学院・消化管・小児外科学), 井上 靖浩(三重大大学院・消化管・小児外科学), 内田 恵一(三重大大学院・消化管・小児外科学), 毛利 靖彦(三重大大学院・消化管・小児外科学), 楠 正人(三重大大学院・消化管・小児外科学) |
抄録 |
【背景・目的】RacGAP1(Rac GTPase-activating protein 1)は, 様々な細胞過程を制御し,腫瘍の進展・転移に関与することが報告されている.しかしながら, 胃癌とRacGAP1発現の関連については未だ報告されていない. 今回, 我々は胃癌RacGAP1発現と臨床病理学的因子との関連について検討した.【対象・方法】2001-2011年の間に, 当科にて胃癌に対し手術を施行した232例(術前補助療法症例を除く. 年齢中央値: 68歳, 男/女:163/69, stage I: 111例; II: 43例; III: 47例; IV: 30例, 観察期間中央値: 28ヶ月)を対象とした. パラフィン包埋切片を用い, 2-3μmのスライドを作成し, RacGAP1モノクローナル抗体にて免疫組織学染色を行った. Immunohistochemistry (IHC) score (% x intensity: range 0-200)及び腫瘍先進部RacGAP1発現について評価を行った.【結果】RacGAP1は, 胃癌細胞の核にその発現を認めた. IHC scoreによる評価では, 組織型以外に臨床病理学的因子との有意な関連を認めなかったことから, 腫瘍先進部RacGAP1発現の有無にて2群に分類し, 検討した. 81例(35%)に腫瘍先進部RacGAP1発現を認めた.腫瘍先進部RacGAP1発現は, 年齢, 腫瘍型(>50mm), 深達度, リンパ節転移, リンパ管・脈管侵襲, stageと有意な相関を認めた(P<0.0001). 腫瘍先進部RacGAP1陽性例は, 有意に全生存率不良であった(P<0.0001). Cox比例ハザードモデルにおける検討では, リンパ節転移, 遠隔転移, 腫瘍先進部RacGAP1発現陽性が独立した予後規定因子であった(リンパ節転移:P = 0.0106, 遠隔転移:P = 0.0012, 先進部RacGAP1陽性:P = 0.0011).【結語】胃癌先進部RacGAP1発現は, 悪性度, 予後に有意に関連していた. RacGAP1発現は, 胃癌の増殖・進展過程に重要な役割を担っている可能性が示唆された. |