セッション情報 | ポスターセッション(消化器外科学会)大腸-症例 7 |
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タイトル | 外P-676:高齢者虫垂膿瘍の2例 |
演者 | 山口 恵実(出雲市立総合医療センター・外科) |
共同演者 | 浪花 宏幸(出雲市立総合医療センター・外科), 杉山 章(出雲市立総合医療センター・外科) |
抄録 | 【はじめに】虫垂周囲に限局性の膿瘍を形成したものは虫垂膿瘍,周囲組織に炎症が波及し体外より腫瘤状に触知するものは腫瘤形成性虫垂炎と呼ばれる.いずれも急性期緊急手術では拡大手術への移行や術後合併症が懸念される.今回,高齢者の虫垂膿瘍に対し保存的治療を先行し,待機的ドレナージ術を施行した. 【症例】症例1.70歳代男性.腹痛に対し2週間の内服加療で改善なく夜間救急外来を紹介受診した.体温36.8℃,WBC 11400,CRP 14.4,右下腹部に軽度圧痛を認め,腫瘤を触知した.CT検査で回盲部にΦ7cm大の膿瘍が描出され虫垂膿瘍と診断した.保存的治療先行可能と判断し当科入院,第7病日に硬膜外麻酔下膿瘍ドレナージ術を施行した.症例2.80歳代男性.心窩部痛と発熱に対し3週間の内服加療後,肝胆道系酵素とCRPの上昇を認め当院内科を紹介受診した.WBC 9000,CRP 18.8,腹痛は改善,解熱傾向にあった.翌日のCT検査で回盲部周囲膿瘍を指摘,翌々日当科紹介となった.初診時,腹部に圧痛や反跳痛を認めず,下腹部深部に硬い腫瘤を触知した.CT検査で内腔に糞石を示唆する高吸収域構造を伴う膿瘍を認め虫垂膿瘍と診断した.炎症所見は改善傾向を認め,経過から保存的治療先行可能と判断し当科入院,第4病日に硬膜外麻酔下膿瘍ドレナージ術を施行した.2症例とも抗生剤で治癒する可能性もあったが,緊急手術困難のため予定ドレナージ術を施行した.今回,高齢を理由に検査や虫垂切除術を拒否されたが,腫瘍マーカーの上昇なく,初発後9か月,7か月後現在まで再燃を認めていない. 【考察】当院では外科医・麻酔可能医,検査設備など,緊急手術やCTガイド下ドレナージが困難である.また,高齢者が多い当地域は転院搬送を好まない患者家族も少なくない.本疾患は保存的治療先行にて当院のような医療体制でも安全に治療でき,かつ,高次救急病院の負担軽減にも寄与する可能性があると考える.なお,文献的に虫垂炎再発は6か月以内が多く約10%に認めるとされており,今後もinterval appendectomyを検討する予定である. |
索引用語 | 虫垂膿瘍, 待機的ドレナージ術 |