セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-症例 8

タイトル 外P-677:

上行結腸にcolon castを伴って発症した狭窄型虚血性腸炎の1例

演者 高原 秀典(赤穂市民病院・外科)
共同演者 田渕 幹康(赤穂市民病院・外科), 杉山 朋大(赤穂市民病院・外科), 安 炳九(赤穂市民病院・外科), 横山 正(赤穂市民病院・外科)
抄録 症例は50歳台男性,主訴は食欲不振.既往歴として高血圧および10年以上の糖尿病罹患があり,その間,両側の糖尿病性網膜症で光凝固,糖尿病性左足壊疽,糖尿病性腎症を発症していた.また,50本×30年の喫煙歴があった.当院内科に糖尿病で通院中,食欲不振と浮腫を認め,精査加療目的で入院した.入院時血液検査にてHb 7.2g/dL, BUN 100mg/dL, Cre 3.5mg/dlと高度貧血および腎機能低下を認めた.CTにて両側胸水,心拡大,腹水,浮腫など心不全,腎不全を示唆する所見のほか上行結腸に著明な壁肥厚を認めた.また,大動脈や上腸間膜動脈に動脈硬化による石灰化を認めた.下部消化管内視鏡検査にて上行結腸粘膜は全周性に壊死物質で覆われており,ほぼ閉塞状態で内視鏡の通過は不可能であった.狭窄症状が改善しないため,心不全,腎不全をコントロールしつつ手術を予定したが,術前日に12cm長の全周性の脱落粘膜を排泄した.手術は病変部を含めて右半結腸切除を行い,辺縁動脈の血流を確認し,回腸と横行結腸を吻合した.術後経過は順調であった.摘出標本では上行結腸に腸管壁の肥厚と狭窄を認め,組織学的には狭窄部位では粘膜構造は消失し肉芽形成を示す潰瘍性病変を認めた. 粘膜剥離(colon cast)は高度な腸管虚血により大腸粘膜が壊死を起こし,大腸壁が脱落する病態であり,腹部大動脈瘤およびその術後,外傷や開腹手術に起因する腸管の循環障害が原因であることが報告されているが,先行する病態が慢性的な動脈硬化や高血圧などの血管因子である報告は稀である.また,慢性の腸間膜動脈虚血によって右側結腸に狭窄型の虚血性腸炎をきたすことも稀である.本症例は,動脈硬化,高血圧,糖尿病,喫煙などの血管因子を背景に慢性の腸管虚血があり,心不全,腎不全を契機にこれが増悪し,壊死に陥った粘膜上皮の剥離を生じ,腸管狭窄に至ったと考えられた.
索引用語 colon cast, 狭窄型虚血性腸炎