セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-症例 8

タイトル 外P-678:

妊娠23週に急性虫垂炎として発症した虫垂カルチノイドの1例

演者 鈴木 秀明(国立愛媛病院)
共同演者 李 俊尚(市立大洲病院・外科), 湯汲 俊悟(国立愛媛病院), 石丸 啓(国立愛媛病院)
抄録 妊娠23週に急性虫垂炎を発症し,病理学的検索でカルチノイドの合併と診断した症例を経験した. 症例は妊娠23週の28歳女性.右下腹部痛を主訴に当院産婦人科を受診した.炎症所見を認め,抗生物質の投与を行ったが,症状が増悪したため,外科へ紹介され,腹部超音波検査にて腫大した虫垂を認め,急性虫垂炎と診断し,虫垂切除術を施行した.病理組織学的には,蜂窩織炎性急性虫垂炎と虫垂カルチノイドの合併との診断であった.虫垂カルチノイドは虫垂の中央部に長径約1cmで存在し,漿膜面をこえて腹腔内へ露出していた.このため,微小転移および播種病変を危惧し,術後14日に追加切除(回盲部切除および2群リンパ節郭清および漿膜部分切除)を行った.摘出標本には腫瘍細胞はみられなかった.術後経過は良好であり,36週に無事出産した.術後2年7か月で左卵巣嚢腫のため,腹腔鏡下摘出術を施行したが,良性の子宮内膜性嚢胞であり,また,腹腔内に播種性病変を認めなかった.術後再発の徴候はみられない. カルチノイドは神経内分泌細胞から発生する腫瘍と考えられている.全臓器に発生するカルチノイドの中で虫垂カルチノイドは4.7%といわれ,虫垂切除標本の0.3~0.9%の割合で存在しているとされる.女性に多く,平均42.2歳との報告がある.大きさ,組織型,虫垂間膜内進展,断端陽性などの因子で,手術方法が決定されることが多いが,症例が少ないため,今でも議論のあるところである. さらに本症例のように,妊娠中に発症した虫垂カルチノイドは本邦ではほとんどみられない.治療及び経過観察において,きわめて慎重な対応が必要と考えられる.若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 虫垂カルチノイド, 妊娠