セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-症例 8

タイトル 外P-679:

腸管嚢胞様気腫症に対する診断的腹腔鏡の有用性

演者 田端 宏尭(国立南和歌山医療センター・外科)
共同演者 岡 正巳(国立南和歌山医療センター・外科), 中谷 佳弘(国立南和歌山医療センター・外科), 玉置 卓也(国立南和歌山医療センター・外科), 小澤 悟(国立南和歌山医療センター・外科), 木下 幾晴(国立南和歌山医療センター・消化器科)
抄録 【背景】腸管気腫症は,腸管壊死に伴って認められる重篤な所見であるが,近年,保存的に軽快する腸管嚢胞様気腫(以下PCI)の症例が報告されている.しかし,PCIの診断は,CTなどの画像検査では困難である.我々は,保存的に軽快したPCIの2例を経験し,そのうちの1例に対して診断的腹腔鏡を施行した.今回,2例の報告とともに,文献の考察を踏まえて,PCIに対する腹腔鏡診断の有用性について検討する.【症例】症例1は86歳女性で,他院CTで消化管穿孔疑いで当科紹介となった.症状は下痢のみであった.当院CTで,腹腔内にfree air,上行結腸から横行結腸にかけて腸管気腫を認めたため,消化管穿孔と診断し,緊急で開腹手術を行った.CTと同部位の結腸に腸管気腫を認めたものの,明らかな穿孔はなく,PCIと診断し,手術終了した.その後,保存的処置でPCIは改善した.症例2は45歳男性で下肢静脈血栓症治療のための入院中に,右腹部痛と食欲不振で発症した.CTで腹腔内にfree air,上行結腸から横行結腸にかけて腸管気腫を認めたため,当科紹介となった.既往歴に糖尿病があり,αグルコシダーゼ阻害剤を内服していたため,PCIを疑い,緊急で診断的腹腔鏡を施行した.上行結腸から横行結腸,さらに周囲の腹壁にかけて気腫を認めたものの,明らかな穿孔はなく,PCIと診断して手術終了した.その後,αグルコシダーゼ阻害剤の休薬でPCIは改善した.【考察】腸管壊死に伴う腸管気腫症とPCIの鑑別診断は,画像検査のみでは困難である場合も多い.しかし,治療法が,前者は緊急手術,後者は保存的加療と大きく異なるため,その鑑別診断の重要性は非常に高い.腹腔鏡観察は,腹水の性状,腸管の壊死所見の観察が,試験開腹術と比較して,より低侵襲で可能である.画像検査のみでは鑑別診断が困難な症例に対して,腹腔鏡観察を行うことで,適切な治療方針を選択することが出来ると考えられた.
索引用語 腸管気腫症, 腹腔鏡