セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

その他-症例 1

タイトル 外P-688:

鼠径ヘルニアに起因した続発性大網捻転症の1例

演者 田崎 達也(広島市立舟入病院・外科)
共同演者 津村 裕昭(広島市立舟入病院・外科), 日野 裕史(広島市立舟入病院・外科), 金廣 哲也(広島市立舟入病院・外科), 山岡 裕明(広島市立舟入病院・外科), 市川 徹(広島市立舟入病院・外科)
抄録 大網捻転症は,大網の一部あるいは全部がねじれ,捻転部より末梢の血行障害により腹痛をおこす比較的まれな疾患で,器質的疾患の有無により特発性と続発性に分類される.今回われわれは,腹部CTで典型的な像を示した,右鼠径ヘルニアに起因した続発性大網捻転症の1例を経験したので報告する.症例は45歳,男性.特記すべき既往歴なし.5日間続く38℃台の発熱と腹痛のため,当院夜間救急外来を受診した.下腹部の広範囲に圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった.右鼠径部に用手還納不能な鶏卵大の腫瘤を認めた.血液検査でWBC 12,800/μl,CRP36.31g/dlと高度炎症反応を認め,T-Bil1.6g/dlと軽度上昇を認めた.その他に異常を認めなかった.腹部造影CTで,大網は,渦巻き状,同心円状の高吸収域からなる層状構造を示し,右鼠径管に連続していることが確認できた.右鼠径ヘルニア嵌頓に起因する続発性大網捻転症の診断で緊急入院とし,入院翌日,手術を施行した.下腹部正中切開で開腹したところ,大網が捻転し,右鼠径ヘルニア内へ血行障害に陥った大網が嵌頓していた.ヘルニア門の径は約3cmで,日本ヘルニア学会分類I-3の所見であった.大網を還納し,血行障害をおこしている大網を切除した.大網は感染を起こしていないと思われたが,鼠径ヘルニアに対しては内鼠径輪縫縮のみ行った.術後19日目に改めてメッシュプラグ法で鼠径ヘルニア根治術を行った.術後合併症はなかった.術前診断に至るためには,大網捻転症の原因疾患としての鼠径ヘルニアを念頭におき,鼠径部までの診察,骨盤まで含めたCT検査が必要である.
索引用語 大網捻転, 鼠径ヘルニア