セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

その他-症例 1

タイトル 外P-693:

後腹膜腔に発生し診断に苦慮した海綿状血管腫の一例

演者 西村 健(神戸赤十字病院・外科)
共同演者 大鶴 徹(神戸赤十字病院・外科), 湯浅 壮司(神戸赤十字病院・外科), 田村 竜二(神戸赤十字病院・外科), 岡本 貴大(神戸赤十字病院・外科), 石堂 展宏(神戸赤十字病院・外科), 門脇 嘉彦(神戸赤十字病院・外科)
抄録 症例は46歳女性,生来健康であったが検診の腹部エコーにて腫瘤を指摘され当院紹介受診となった.自覚症状はなく腫瘤も体表からは触知できなかったが,CT検査にて十二指腸水平脚と下大静脈,右腎に囲まれる領域に石灰化を伴う辺縁明瞭な軟部腫瘤影を認めた.造影検査でも造影後期相で徐々に腫瘍の濃染像は認めるものの質的診断には至らず,診断的加療を考慮し切除術を施行した.開腹所見では明らかな悪性所見は認めず,腫瘍は十二指腸背側で右腎,下大静脈に囲まれた5cmほどの大きさで肉眼的にも血管腫を疑わせた.腫瘍は腎門部まで広がっておりGerota筋膜を一部切離する層で剥離,さらに尿管とも剥離が必要であった.右卵巣動脈の分枝から腫瘍を栄養していると思われ,卵巣静脈も切離し腫瘍を完全に摘出した.病理組織学的検査にて腫瘍は海綿状血管腫であり血管内にhemosiderin沈着,さらに線維化,硝子化や石灰化を伴い器質化した血栓を認める所見であった.術後経過良好にて第10病日には独歩にて退院された.後腹膜の海綿状血管腫はその他の部位に発生する血管腫と異なりやや乏血性を反映した所見を呈することがあり,またその頻度の少なさから診断に苦慮することが多いとされている.本邦では医中誌にて「後腹膜腫瘍」,「海綿状血管腫」にて検索したところ39例の報告があり,そのほとんどの症例で術前診断が確定しないまま手術を施行していた.本症例でも術前の質的診断は困難であり悪性腫瘍も否定できないことから診断的治療を含めて手術に踏み切った.血流に乏しい後腹膜腫瘍の鑑別には海綿状血管腫も考慮すべきであると考えられ,若干の文献的考察を加え発表する.
索引用語 後腹膜腫瘍, 海綿状血管腫