抄録 |
【症例】64歳男性.【既往歴】特記すべきことなし.【現病歴】7日前からの腹痛で1次救急センターを受診した.腹部Xp上niveauを認めileusの疑いにて当院紹介受診した. 来院時発熱なく臍部に圧痛と発赤,軽度膨隆を認めた.血液検査所見上は白血球16700/μl,CRP14.2 mg/dlと炎症高値を認めた.腹直筋膿瘍,尿膜管遺残等を疑い腹部multidetector CT(以下MDCT)を施行したところ臍部腹直筋下に被包化された内部不均一な腫瘤(40mm×35mm大),腹膜下腹腔内脂肪識濃度の上昇を認めた.またその嚢胞の内部に腹膜を貫く20mm長の high denseな線状陰影を伴っていた.来院まで排便異常なく,腸管壁と線状陰影とに明らかな交通がないことより魚骨が腹直筋直下にて穿孔し腹腔内膿瘍形成腹膜炎に至ったものと診断し治療目的に緊急入院となった.膿瘍腔は皮下まで波及しており膿瘍腔が腹腔内と明らかな交通なしと考え同日1.5cm大の臍部切開にて排膿術施行した.多量の膿性排液を認め生食にて洗浄ののちペンローズドレーンを留置した.切開部位からは明らかな異物は摘出されなかった.入院後抗生剤投与,臍部洗浄,ドレナージにて膿瘍腔は縮小傾向を認めた.入院後の小腸造影検査上腸管に明らかな穿孔の所見は認めなかった.2週間後に再検した腹部CTにて前述のhigh denseな線状陰影が腹壁近傍まで上昇してきていた.再度臍創部より膿瘍腔内を検索し約2cm大の魚骨様物質を摘出し病理学的に魚骨と診断された.摘出後の腹部CT所見上線状陰影は消失し完全に摘出されたものと診断した.その後膿瘍腔は縮小し炎症反応陰性化を認めたため入院後20日目に退院となった.その後外来follow継続中であるが明らかな膿瘍再燃は認めていない.【考察】本邦における異物による消化管穿孔症例はこれまでいくつもの報告がある.しかしながら保存的加療での軽快例は認めるものの本症のような開腹手術なしで腹膜外から摘出した例はこれまで報告がなく,非常に稀な症例であると考えられた.これまでの本邦の症例と比較検討し考察を加え報告する. |