セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

その他-症例 2

タイトル 外P-696:

後腹膜の巨大なchronic expanding hematomaの1例

演者 坂田 真希子(昭和大藤が丘病院)
共同演者 北村 陽平(昭和大藤が丘病院), 松原 猛人(昭和大藤が丘病院), 梅本 岳宏(昭和大藤が丘病院), 水上 博喜(昭和大藤が丘病院), 齋藤 充生(昭和大藤が丘病院), 木川 岳(昭和大藤が丘病院), 根本 洋(昭和大藤が丘病院), 田中 淳一(昭和大藤が丘病院)
抄録 【諸言】Chronic expanding hematomaは1980年にReidらが初めて報告した病態で,1か月以上経過して徐々に増大する血腫である.我々は後腹膜の巨大なchronic expanding hematomaの手術を経験した.【症例】66歳女性,主訴:腹部腫瘤,既往歴:18年前に子宮および左卵巣摘出術,外傷歴:なし,現病歴:平成23年9月頃に腹部腫瘤を自覚.腹部腫瘤が増大傾向のため平成24年2月に当院を受診.巨大な後腹膜腫瘍に対し診断と症状改善目的で手術の方針となった.【入院後経過】後腹膜腫瘍摘出術施行.摘出標本は大きさ30×35cm,8500g,表面平滑,腫瘤内部は絨毛状で古い血液が充満.腫瘤壁に淡黄色の組織を認めChromogranin A染色で副腎であると証明された.悪性を疑う所見はなかった.長期間で増大した血腫であること,血液検査上で出血傾向がないことおよび画像所見と合わせてchronic expanding hematomaと診断.【考察】chronic expanding hematomaの定義に明確な基準はない.悪性所見がないことと出血傾向がないことが絶対条件である.医学中央雑誌でchronic expanding hematomaを検索すると1987年から2011年までに82例の報告があった.腹腔内の発生例の報告は82例のうち僅か8例のみであった.本症例は後腹膜に発生した巨大な腫瘤であり非常に稀な症例であると言える.治療に関しては,被膜の不完全切除で再発した報告があり,被膜を含めた完全切除が最良である.本例では術前の画像検査をもとに術中のアプローチをイメージした.結果,稀に見る巨大腫瘍だったが完全に摘出することができた貴重な1例と考える.また,血腫の発生の契機となる出血があるはずだが,腫瘤壁に副腎組織があったことから自覚のない副腎出血が契機となった可能性も考えた.契機となる血腫が増大した機序は諸説ある.【結語】後腹膜に発生した巨大なchronic expanding hematomaを経験した.発生の機序・診断・治療に関して文献的考察を加えて報告する.
索引用語 後腹膜腫瘍, chronic expanding hematoma