セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

その他-症例 2

タイトル 外P-697:

肝疾患を伴わない超高齢者に発症した特発性細菌性腹膜炎の1救命例

演者 中田 岳成(長野松代総合病院・外科)
共同演者 関野 康(長野松代総合病院・外科), 熊木 俊成(長野松代総合病院・外科), 藍澤 喜久雄(長野松代総合病院・外科)
抄録 特発性細菌性腹膜炎(SBP)は肝硬変症例に合併する頻度が高い病態であるが,肝疾患を伴わない発生は稀である.非肝硬変の超高齢者に発症し救命しえたSBPの1例を報告する.【症例】89歳,女性.要介護で施設入所中.主訴:上腹部痛.現病歴:受診日前々日から発熱,前日から上腹部痛,尿量減少を認めていた.現症:血圧70/40 mmHg,腹部広範に筋性防御.血液検査所見:WBC 8400, CRP 27.77mg/dL, BUN 94.7mg/dL, Cr 2.79 mg/dL. 肝機能異常なし,HBV/HCV関連マーカー陰性.腹部CT所見:左右横隔膜下から骨盤腔まで多量の腹水.胃内に食物残渣多量,結腸に便貯留多量.明らかな腹腔内遊離ガス,絞扼像,腫瘍性病変などは指摘出来なかった.消化管穿孔による汎発性腹膜炎を疑い同日開腹手術を行った.手術所見:腹腔内に多量(1200ml)の緑黄色汚染腹水を認めた.胃体下部,十二指腸球部,肝十二指腸間膜周囲が最も汚染が高度であった.腹腔内を検索したが,穿孔・局所炎症所見,腫瘍性病変を認めなかった.術中内視鏡検査を行い十二指腸水平部まで観察したが異常所見は確認出来なかった.肝臓は加齢性の変化と思われる軽度線維化を認めた.腹腔内洗浄,左右横隔膜下,ダグラス窩のドレナージを行い手術終了.腹水細菌培養検査ではE.coli, Enterococcus faecium,動脈血血液培養検査からはE.coliが検出された.術後エンドトキシン吸着療法,持続血液透析濾過法を施行.DICを併発し,血小板数は第3病日2.1万まで減少.全身状態は徐々に改善し第9病日経口摂取開始,第10病日ドレーン抜去.経口摂取開始後,腹膜炎の再燃なく経過した.【考察】SBPは感染源不明の細菌性腹膜炎で,腹水を伴う肝硬変症例では合併する頻度が高い.SBPの背景疾患として肝疾患以外にはネフローゼ症候群,大腸癌などの報告も散見されるが,本症例では,特定の背景疾患は確認できなかった.本症例での発症機序はADL低下に伴う消化管蠕動運動の低下,消化管内圧上昇が誘引になった可能性が推測された.
索引用語 特発性細菌性腹膜炎, 非肝硬変