セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

その他-基礎研究

タイトル 外P-707:

胃癌におけるC5a受容体発現の臨床的意義

演者 新田 英利(熊本大大学院・消化器外科学)
共同演者 今村 隆寿(熊本大・分子病理学), 黒木 秀幸(熊本大大学院・消化器外科学), 中川 茂樹(熊本大大学院・消化器外科学), 藏元 一崇(熊本大大学院・消化器外科学), 今井 克憲(熊本大大学院・消化器外科学), 林 洋光(熊本大大学院・消化器外科学), 橋本 大輔(熊本大大学院・消化器外科学), 生田 義明(熊本大大学院・消化器外科学), 近本 亮(熊本大大学院・消化器外科学), 石河 隆敏(熊本大大学院・消化器外科学), 別府 透(熊本大附属病院・消化器癌集学的治療学), 馬場 秀夫(熊本大大学院・消化器外科学)
抄録 【背景】慢性炎症は癌の発生,増悪に深く関与している.慢性炎症部位で産生されるケモカインはその受容体を有する癌の浸潤,転移に重要な役割を果たしている.われわれは以前同様に炎症部位で産生され,ケモカインのように白血球刺激作用を有する補体C5aがその受容体C5aRを有する癌細胞の転移・浸潤能を亢進させることを胆管癌にて報告した.今回,C5aRの発現が高度であった胃癌においてC5aR発現の臨床的意義を明らかにすることを目的とした.【方法】2000年12月から2009年10月の間に,当科において前治療なしに切除を行った胃癌症例133例を対象とした.癌の最深部を含む切片においてC5aRの免疫染色を行った.判定法として癌部で染色性を有する癌細胞の割合で(0%;-,1~25%:1+,25~50%;2+,50%~;3+)と判定し,2+以上を高発現,1+以下を低発現とし,癌細胞におけるC5aRの発現と臨床病理学的因子の関連について検討した.【結果】C5aR発現は,高発現が37例(27.8%)であり低発現が96例(72.2%)であった.高発現群は低発現群にくらべ,高齢(≧74歳),上部,深達度(pT3以深),AJCC stage(III or IV),脈管侵襲陽性が有意に多かった.stageIV (n=17)をのぞくstage I~III 116例において予後を検討したところ,5年無再発生存率は高発現群61.1%,低発現群で87.0%であり高発現群が有意に予後不良であった(p=0.017).また5年生存率は高発現群で44.1%,低発現群は88.1%であり高発現群は有意に予後不良であった(p=0.012).【まとめ】C5aR高発現胃癌は上部に多く,脈管侵襲陽性,深達度が有意に大きい結果であった.またC5aR高発現胃癌は累積生存,無再発生存ともに予後不良であった.この結果から,C5aR陽性胃癌症例に対してC5aRが治療の新たな分子標的となりうることを示唆する.
索引用語 胃癌, C5a