セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

その他-基礎研究

タイトル 外P-710:

顕微質量分析装置を用いたヒト大腸癌由来Spheroidの脂質解析

演者 平出 貴乗(浜松医大・2外科)
共同演者 坂口 孝宣(浜松医大・2外科), 武田 真(浜松医大・2外科), 柴崎 泰(浜松医大・2外科), 森田 剛文(浜松医大・2外科), 鈴木 淳司(浜松医大・2外科), 菊池 寛利(浜松医大・2外科), 鈴木 昌八(磐田市立総合病院・消化器外科), 瀬藤 光利(浜松医大・分子解剖学), 今野 弘之(浜松医大・2外科)
抄録 【背景・目的】がん幹細胞マーカー陽性細胞はin vivo腫瘍形成能,悪性形質獲得能,Spheroid形成能が高い.がん幹細胞由来細胞集団によって形成される3次元Spheroid培養系は生体内環境を模倣することができる.特に,2011年に奥山らが報告したヒト癌組織からSpheroidを作成する初代培養CTOS(Cancer Tissue-Originated Spheroid)はcell line由来spheroidと比べてより生体に近く,薬物抵抗性試験をはじめとする個別化治療,バイオマーカーなどへの応用も期待されている.しかし,Spheroidを生理解剖学的な面から解析した報告は少ない.我々は質量顕微鏡法を用いた生体分子分布観察を行ってきたが,その空間分解能は組織レベルが限界であった.しかし,技術革新に伴って顕微質量分析装置の空間分解能が向上した.今回の目的は,500μmの微小細胞集団Spheroid環境内における生体分子分布解析を行い,Spheroid特異的に分布差異のみられる分子種を同定することでそれら分子種の重要性を調べることである.【方法】1.大腸癌細胞株(HCT116,DLD-1)を単層培養および3次元Spheroid培養を作成.2.大腸癌原発巣および原発巣から作成したCTOSを作成.大腸癌原発巣,Spheroid,CTOSは薄切片化し,マトリクスを塗布したのち,顕微質量分析装置を用いてスペクトルを抽出した.データは画像化解析ソフトを用いて変換した.【結果】得られたスペクトルから豊富なイメージ画像が得られ,様々なリン脂質の同定が可能であった.原発巣と比較しCTOSではm/z672.4(p<0.01)の物質が豊富に存在していた.【結論】顕微質量分析装置は今までの質量顕微鏡では測定できなかった超微小な物質にも応用可能であり,がん幹細胞の同定や悪性化を引き起こすメカニズムの解明につながると考えられる.
索引用語 幹細胞, Spheroid