セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

その他-症例 4

タイトル 外P-732:

初発時にGIST疑と診断されたが,再発時に平滑筋肉腫との確定診断に至った後腹膜腫瘍の1例

演者 松永 明宏(北見赤十字病院・外科)
共同演者 池田 淳一(北見赤十字病院・外科), 新関 浩人(北見赤十字病院・外科), 山口 晃(北見赤十字病院・外科), 宮坂 大介(北見赤十字病院・外科), 菊地 健司(北見赤十字病院・外科), 長間 将樹(北見赤十字病院・外科), 本谷 康司(北見赤十字病院・外科)
抄録 症例は70代男性.糖尿病で通院中,スクリーニング腹部超音波検査で後腹膜に3cm径の腫瘤を指摘された.CTで,腫瘤は十二指腸水平脚,右腎下極,腸腰筋に接し,境界明瞭,類球形,内部は充実性で均一に造影された.MRI,EUSでも同様の所見であり,明らかな周囲臓器との連続性は確認できなかった.右鼠径部にも2cm径の同様の腫瘤を認め,FNAを行ったが確定診断に至らなかった.3か月後のCTで増大傾向を認めたため,診断・治療目的に手術を施行した.手術所見では上記2か所以外に回腸粘膜下にも2cm大の腫瘤を認め,これらを全て切除した.切除標本ではいずれも紡錘形腫瘍細胞の錯綜配列が観察され,切除断端は陰性,核分裂像は5/50HPFであった.免疫組織学的にはVimentin陽性,S-100弱陽性,CD34弱陽性,αSMA弱陽性で,c-kitは腫瘍細胞の1%で陽性であった.明らかな分化傾向を示さず,弱いながらもCD34,c-kitが陽性であったことからGISTを第一に考え,補助化学療法としてイマチニブ投与を行った.手術から半年後に右腎下極に腫瘍の再出現を認め,再切除を行った.組織像は初回手術標本と類似していたが,腫瘍細胞の密度が増加し,核分裂像も30/50HPFと増加していた.免疫組織学的には,αSMA強陽性,CD34弱陽性,c-kit陰性,S-100陰性であった.初回手術は断端陰性と診断されたが,腫瘍は初回摘出部に発生しており,組織学的類似性からも腫瘍再発と診断した.しかし,免染の結果からは平滑筋肉腫と診断するのが妥当と考えられた.初回標本でGIST疑と診断されたが,再増殖・再発の過程で補助化学療法の影響が加わって筋原性腫瘍としての性格が顕在化してきたと推測された.非典型的なGISTの診断には遺伝子検索等のより慎重な態度が望まれる.以上,若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 GIST, 平滑筋肉腫