セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

その他-症例 4

タイトル 外P-733:

門脈・上腸間膜静脈血栓症の二例

演者 安藤 仁(福島県立医大・器官制御外科)
共同演者 菅家 康之(福島県立医大・器官制御外科), 岡田 良(福島県立医大・器官制御外科), 八島 玲(福島県立医大・器官制御外科), 志村 龍男(福島県立医大・器官制御外科), 小山 善久(福島県立医大・器官制御外科), 竹之下 誠一(福島県立医大・器官制御外科)
抄録 門脈上腸間膜血栓症は比較的稀な疾患であり,腸管壊死を引き起こし致命的な結果となりうる疾患である.またその誘因としては様々な凝固能異常が指摘されている.今回我々は先天性AT3欠損症とプロテインC欠乏症に伴った門脈上腸間膜静脈血栓症の2例を経験したので報告する.症例1は47歳,男性.平成24年8月中旬上腹部痛が出現.8月下旬施行された腹部CTにて膵鈎部腫瘤と門脈上腸間膜静脈の腫瘍塞栓が疑われたため当院紹介されたが門脈血栓症との診断にて血栓溶解療法を施行された.9月下旬門脈本幹の血栓の縮小,腸管浮腫の改善を認めたため退院となったが,10月上旬腸閉塞の診断にて再入院となった.またAT3活性28%と低値を認め,AT3欠損症を背景に門脈血栓を形成し腸管循環不全を来した一部の腸管が瘢痕性狭窄を来したと考えられた.10月下旬精査加療目的に当科入院.AT3活性低下の精査とAT3補充療法を行い,10月下旬イレウス解除術を施行.術後経過は良好で現在もワーファリン内服を継続しながら外来通院中である.また精査の結果,AT3抗原の低下も認めAT3活性の低値と併せて先天性AT3欠損症I型と診断された.症例2は24歳東南アジア圏の男性.平成25年2月上旬腹痛と背部痛を自覚し近医受診.近医で経過をみられていたが2月中旬に腹痛の増悪を認め精査目的に当科紹介.精査の結果,門脈上腸間膜血栓症の診断で入院となった.発症から時間が経過していると考えられたため血栓溶解療法の適応なく,また腸管壊死像は認められなかったため保存的に加療する方針となった.精査の結果,プロテインC(PC)抗原量の低下とPC活性値の低下を認めPC欠乏症I型と診断された.電撃性紫斑病に注意しながらヘパリン/ワーファリンによる抗凝固療法を行い,門脈血栓症の改善を認め保存的に治療し得た.今回我々は先天性AT3欠損症とプロテインC欠乏症に伴った門脈上腸間膜静脈血栓症の2例を経験したため文献的考察を加えて報告する.
索引用語 門脈血栓症, 上腸間膜静脈血栓症