セッション情報 |
ポスターセッション(消化器外科学会)
その他-症例 5
|
タイトル |
外P-737:術中止血困難でガーゼパッキングを行った骨盤内巨大後腹膜神経鞘腫の1手術例
|
演者 |
久永 真(国立嬉野医療センター・外科) |
共同演者 |
橋本 泰匡(国立嬉野医療センター・外科), 荒木 政人(国立嬉野医療センター・外科), 古川 克郎(国立嬉野医療センター・外科), 柴崎 信一(国立嬉野医療センター・外科), 岡 忠之(国立嬉野医療センター・外科) |
抄録 |
症例は82歳女性.2012年7月,下腹部痛を主訴に近医受診.骨盤内腫瘍を指摘され当院紹介となった.腹部造影CTにて,小骨盤腔内の仙骨前面に長径約9cmで,内部がわずかに造影される腫瘍を認めた.MRIにて,T1強調像で低信号, T2強調像で内部不均一な高信号を呈する腫瘍を認め, 病変は右第4仙骨孔にわずかに入り込んでいた.仙骨部神経由来の後腹膜神経鞘腫を最も疑い切除を行うこととなった.開腹すると,腫瘍は仙骨前面から直腸を腹側に圧排していた.腫瘍底部は肛門挙筋直上まで広がっており,小骨盤腔に嵌り込むように存在していた.腫瘍摘出後,骨盤底から出血源を特定できないようなoozingを認めた.約1時間の止血操作にも関わらず止血コントロール得られず,出血量が1700mlとなった時点で,これ以上の出血はDICを来す可能性が高いと判断した.ガーゼで骨盤底を圧迫し閉腹した.手術時間は286分,総出血量は1780mlであった.術後はRCCおよびFFPの輸血を行いながら凝固能の改善行った.約24時間後に再開腹を行いガーゼ摘出し,止血を確認後閉腹した.摘出標本は90×87mmで,線維性被膜に覆われた表面平滑な腫瘍で,割面は黄白色を呈していた.組織学的には紡錘型の腫瘍細胞が錯綜に増生しており,悪性の所見は認めず,免疫組織学的にS-100蛋白陽性で,神経鞘腫の診断となった.後腹膜神経鞘腫は,被膜を含めた外科的完全切除が第一選択であるとされているが,仙骨前面に発症した場合,狭小な骨盤内での手術操作が要求され,大量出血の報告例も散見される.ガーゼパッキングは大量出血時の止血手段として有効な処置であるが,術後感染リスクの増加や二期的手術が必要になるなどの問題もある.しかし,制御不能な出血に対して,早い段階でガーゼパッキングを行うことで,合併症なく,確実に止血を得ることができた.今回我々は,比較的稀な骨盤内巨大後腹膜神経鞘腫の1切除例を経験したので文献的考察を含めて報告する. |
索引用語 |
骨盤内神経鞘腫, ガーゼパッキング |