抄録 |
【目的】当院人間ドックで実施している食道・胃癌検診は,X線造影検査と内視鏡検査であり,受診者の選択性としている.2012年10月に健診センターを新規OPENし,センター内に内視鏡検査室を新設し,増加する内視鏡検査希望者に対応している.X線,内視鏡両検査の成績と,偽陰性例について検討した.【対象と方法】直近の過去6年間の検査成績を検討した.また検査後2年以内に癌が発見されたものを偽陰性例とし,原因,背景について分析した.【成績】上部消化管X線造影検査26874名のうち,要精検者1251名,精検受診者数853名(要精検率4.7%,精検受診率68.2%)で,早期胃癌7名,進行胃癌5名,癌発見率0.045%であった.上部消化管内視鏡検査27450名中,早期胃癌83名,進行胃癌8名,癌発見率0.33%であった.また食道癌については,直近4年間でみると,表在癌11例(M9例,SM2例),進行癌1例でいずれもNBIを併用した内視鏡検査で発見されていた.X線造影検査偽陰性例は4例で,早期胃癌2例,進行胃癌2例であった.進行胃癌2例は病変を指摘し,数回の精検受診勧奨にもかかわらず未受診であった.内視鏡検査の偽陰性例は40例(44%)46病変であった.病変部が撮影されていなかった見落とし例は4例4病変で,病変部は撮影されていたが,見逃していたのは19例21病変であった.未撮影部位は噴門~穹隆部の小弯,前壁側で,見逃し例は胃体部~幽門部の小弯,後壁部位に多く認められた.見逃しの原因は,不十分な洗浄による粘液付着や,軽微な凹凸,色調変化の見逃し等であった.【考案】内視鏡検査がX線造影検査に比し胃癌発見率は優れていた.色素散布,NBIを併用した観察は,食道・胃の早期癌発見に有用と思われる.また偽陰性例の検討から,詳細な観察とブラインドのない撮影が不可欠で,早期癌で発見するためには少なくとも隔年の内視鏡検査が必要と考えられた. |