共同演者 |
吉川 公彦(奈良県立医大・放射線医学), 福居 健一(奈良県健康づくりセンター), 大石 元(奈良県健康づくりセンター), 平井 都始子(奈良県立医大・中央内視鏡・超音波部), 藤井 久男(奈良県立医大・中央内視鏡・超音波部), 吉本 正伸(奈良市総合医療検査センター), 武輪 恵(平成記念病院(奈良)・放射線科), 齋藤 弥穂(高の原中央病院・放射線科) |
抄録 |
【はじめに】胃がんX線検診において,ヘリコバクター・ピロリ(以下Hp)胃炎を念頭に良性病変を含めた胃疾患全体を包括できる読影基準と指示区分の確立が急務である.我々が奈良県対策型胃がん検診に導入した新読影基準の概要を述べる.【診断カテゴリーと指示区分】『0:評価困難⇒追加検査』『1:正常範囲』『2:良性⇒2-a:精査不要2-b:要経過観察=逐年受診勧奨』『3:良性,但し悪性を否定できず⇒内視鏡検査』『4:悪性の可能性⇒至急受診』『5:ほぼ悪性⇒至急受診』と分類した.【読影基準例】1) 胃炎: Hp胃炎と判定すれば原則2-b.2) 隆起性病変:胃底腺ポリープは2-a.3) 陥凹性病変:胃潰瘍瘢痕は2-b.【胃癌発見例の検討】平成19- 21年度住民検診における癌発見例のうち,前々年までの受診歴がある13例について後方視的に検討した結果,全例がカテゴリー2b相当であった.【新基準導入結果】平成21年度後半より新基準を導入し,カテゴリー別頻度(%)は1(47.1), 2a(23.6), 2b(24.0), 3(4.3), 4/5(0.6)となった.以下 22年度は1(57.8), 2a(7.7), 2b(30.0), 3(4.1), 4/5(2.9), 23年度は1(34.5), 2a(6.6), 2b(53.0), 3(4.7), 4/5(1.1)で新基準導入後の3年間の要精検率はそれぞれ5.1%, 4.6%, 5.9%であった.平成22年度逐年発見癌7例の前年度判定は2b:4例,1:3例で後方視的に後者は全て2b相当であった.【考察とまとめ】新基準導入1年目は概念が十分浸透していなかったが,現在に至るまで読影医にHp胃炎の概念が浸透しつつある.奈良県では平成24年度に本基準を公表し,平成25年度から正式に胃がん検診実施要綱に記載し,県内各所での研修会を通じて新基準の普及をはかった.今後の追跡調査を通じて新基準の妥当性を検証する予定である. |