抄録 |
【はじめに】健診における腹部超音波スクリーニングで, 脂肪肝は最も頻度の高い所見である. 当院の健診では, 肝腎コントラストにより脂肪肝の診断を行っている. 当院の健診の腹部超音波検査で脂肪肝と診断された症例の半数以上において肝酵素が正常範囲内であった. 肝酵素の測定のみでは半数以上の脂肪肝が見逃されていることが考えられた. 【目的】肝酵素正常の脂肪肝の特徴を見出すことは, 脂肪肝の拾い上げに役立つことと考えた. 本研究の目的は肝酵素が正常な脂肪肝症例群の特徴を見出すことである. 【対象と方法】当院の健診で腹部超音波検査を施行した3092名(男性1931名,女性1161名)のうち, 脂肪肝を指摘されたのは789名であった(男性611名,女性178名). そのうち, 肝酵素(AST,ALT)が高値を示したのは, 182名(男性158名,女性24名)であった. 今回, (1)我々は脂肪肝のある群とない群, (2)脂肪肝があり, 肝酵素上昇のある群とない群, (3)肝酵素が正常で脂肪肝のある群とない群の間で, 身長, 体重, BMI, γGTP, アルカリフォスファターゼ, 総コレステロール, HDL, LDL, 中性脂肪,コリンエステラーゼ, ZTT, 血糖, HbA1c, インスリンの比較を行った. 統計処理は, 統計ソフトSPSSを用い, 単変量解析を行った. 【結果】(1)の検討で, 体重, BMI, AST, ALT, γGTP, 総コレステロール, HDL, LDL, 中性脂肪, 血糖, HbA1c, インスリン, (2)の検討で, 体重, BMI, AST, ALT, γGTP, 総コレステロール, LDL, 中性脂肪, コリンエステラーゼ, 血糖, HbA1c, インスリン, (3)の検討で, 体重, BMI,γGTP, 中性脂肪, HDL, 血糖, HbA1c, インスリンに関して, 有意差がみられた. 【結論】脂肪肝がある場合, 肝酵素上昇のある群で, 肥満, 高脂血症, 耐糖能異常が多い傾向にあった. また, 肝酵素が正常でも, 肥満, 高脂血症, 耐糖能異常のある症例では, 脂肪肝である可能性があることが示唆された. |