セッション情報 ポスターセッション(消化器がん検診学会)

大腸1

タイトル 検P-13:

一般地域住民を対象とした大腸がん検診マルチメディアキャンペーンの効果:準実験デザイン

演者 石川 善樹(自治医大地域医療学センター・公衆衛生学)
共同演者 松田 一夫(福井県健康管理協会・県民健康センター), 斎藤 博(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター・検診研究部)
抄録 【目的】
大腸がん検診による死亡率減少の実現には,一定水準の高い一次検診受診率を保つことが不可欠である.受診率向上施策に関するシステマティックレビューによれば,乳がん検診・子宮頸がん検診については,複合的なマルチメディアキャンペーンの有効性が指摘されているものの,大腸がん検診に関する知見は限定的である.そこで本研究では,マルチメディアキャンペーンによる大腸がん検診の受診率向上効果を検証することを目的とした.

【方法】
本研究は,準実験デザインを用いた.福井県福井市において,2009年11月から1カ月間の間,15秒のテレビCMが800GRP流された.介入群(マルチメディアキャンペーン群)である61歳 (n=5084)には,テレビCMに加え,パンフレットによる受診勧奨が行われた.対照群(テレビCM群)として,62歳(n=4494)を設定した.なお,大腸がん検診の受診期間は,2009年12月から2010年3月までの4か月間であった.両群の受診率の比較には,Z検定を用いた.また,介入の経済性を評価するために,乳がん検診受診者を一人増やすのに追加でかかったコストを,「総コスト÷受診者数」により算出した.分析はITT(intention-to-treat)解析により行われ,得られたデータの統計解析には,SAS9.1.3(SAS Institute, Cary, NC)を用いた.

【成績】
大腸がん検診の受診者は,マルチメディアキャンペーン群で181名 (3.6%),テレビCM群で77名 (1.7%)であった.Z検定の結果,マルチメディアキャンペーンは ,テレビCM単独に比べて,統計的有意に受診率が高い傾向がみられた(p<0.001). 受診者一人を増やすのにかかったコストは,マルチメディアキャンペーン群で7247円,テレビCM群で9351円であった.

【結論】
マルチメディアキャンペーンは,テレビCM単独に比べて,大腸がん検診の受診率向上効果がみられたが,その効果は限定的であった.
索引用語 大腸がん検診, マルチメディアキャンペーン