共同演者 |
了徳寺 大郎(がん・感染症センター都立駒込病院・外科), 加藤 剛(がん・感染症センター都立駒込病院・外科), 出江 洋介(がん・感染症センター都立駒込病院・外科), 藤原 純子(がん・感染症センター都立駒込病院・内視鏡科), 門馬 久美子(がん・感染症センター都立駒込病院・内視鏡科), 山本 貴嗣(帝京大附属病院・内科), 久山 泰(帝京大附属病院・内科), 佐仲 雅樹(城西国際大・薬学部) |
抄録 |
背景:食道癌において5FUを用いた術前化学療法は標準治療のひとつである.その有害事象である粘膜障害,それに伴う吸収障害は術後のQOLに影響する可能性があるが,その評価法は確立されていない.目的:今回,食道癌患者において,術前化学療法前後の消化管の粘膜・吸収障害の影響を,13C酢酸Na塩を用いた呼気試験で検討した.対象と方法:対象は当科で胸部食道癌と診断,1.未治療,2.経口摂取可能かつ術前化学療法を施行し検査の協力を得られた12名.化学療法施行前と終了後,下痢などの有害事象が完全に改善した時期の計2回,13C-酢酸Na塩(100mg)を添加したゲル状検査食(ペプチーノ(テルモ)200ml+イージーゲル(大塚製薬)3パック)を使用し,摂取前,摂取後における呼気中13CO2変化量(Δ‰)を定量的に評価した.13C法胃排出能検査・標準法に準じて行った.有害事象に関してはCTCAEv3.0に準拠した.結果:Grade 1以上の下痢を12例中5例(42%)に認めた.下痢を認めた5例全例,化学療法前と比較し化学療法後において平均Tmaxが化学療法前後でそれぞれ105,80.0(p=0.444),Cmaxがそれぞれ30.3,21.0(p=0.028)となり化学療法後において有意にCmaxが低値となった.一方,下痢を認めなかった症例では平均Tmaxが化学療法前後でそれぞれ90.0,87.5(p=0.833),Cmaxがそれぞれ28.1,30.8(p=0.391)となり,化学療法前後でほぼ変化は認めなかった.化学療法により下痢を発症した症例は,下痢が改善した後も消化管吸収障害が依然として残存していることが示唆された. 結語:13C呼気試験を用いて,食道癌患者に対する化学療法に伴う粘膜・吸収障害を簡便かつ客観的に評価できうる可能性が示された. |