セッション情報 ポスターセッション(消化吸収学会)

消化吸収-2

タイトル 吸P-6:

クローン病患者の栄養状態に及ぼす経腸栄養剤使用と抗TNFα抗体薬の影響

演者 池上 奈津子(高野病院・栄養科DELIMITER熊本県立大大学院・環境共生学研究科)
共同演者 豊田 裕輝子(高野病院・栄養科), 入江 朋子(高野病院・消化器外科), 野崎 良一(高野病院・消化器内科), 山田 一隆(高野病院・消化器外科), 赤星 亜朱香(熊本県立大大学院・環境共生学研究科), 南 久則(熊本県立大大学院・環境共生学研究科)
抄録 【目的】 クローン病(CD)は原因不明の難病であり,根本的な治療は確立されていない.近年抗TNFα抗体薬が開発され,CDの治療に大きな役割を果たしているが,根治治療ではないことや副作用が見られるなどの問題点が存在する.しかしながら,栄養療法の有無や,抗TNFα抗体薬使用が患者の栄養状態に及ぼす影響については明らかではない.今回CD患者の栄養状態に及ぼす経腸栄養剤,抗TNFα抗体薬使用の有無の影響について調査した.【方法】当院で加療しているCD患者(CD群23名,41.8±11歳,男/女=19/4)と健常人(対象群23名,40.6±11歳,男/女=12/10)を対象とし,平成24年8月から11月に調査を実施した.(1)食事摂取状況調査:秤量法による3日分の食事摂取記録を基に栄養素摂取量を調査した.(2)食習慣調査:日常の食習慣について調査票を用いて調査した.(3)食事記録から1週間以内に採血を行い,生化学検査を行った.【成績】栄養摂取量を比較すると脂質,モリブデン,マンガン,ビオチン,多価不飽和脂肪酸,一価不飽和脂肪酸,不溶性食物繊維はCD群で対象群に対し有意に低く,レチノール,ビタミンB6の摂取量はCD群で有意に高かった(P<0.05).牛乳,コーヒー,野菜,アルコール,魚の摂取頻度はCD群で有意に低かった(P<0.01).血液生化学検査ではAlb,TchoはCD群で有意に低かった(P<0.01).CD群を経腸栄養剤使用群(EN群)と非使用群(nonEN群)に分けて栄養摂取量を比較するとEN群でカルシウム,亜鉛,銅は有意に高かった(P<0.01).CD群を抗TNFα抗体使用有群と抗TNFα抗体使用無群に分けて比較すると全ての項目で両群間に差は認められなかった.【結論】CD患者は低脂肪,低残渣食を意識した食事を基本的に実施しており,経腸栄養剤,抗TNFα抗体薬使用の有無で栄養状態に差は認められなかった.EN群はCD患者で不足しやすいカルシウムや亜鉛,銅を栄養剤によって補給できていた.
索引用語 炎症性腸疾患, 栄養状態