セッション情報 ポスターセッション(消化吸収学会)

消化吸収-2

タイトル 吸P-9:

膵導管細胞上皮における重炭酸イオン輸送のコンピュータシミュレーション

演者 山口 誠(名古屋大大学院・健康栄養医学)
共同演者 山本 明子(名古屋大大学院・健康栄養医学), S. Martin(Faculty of Life Sciences, University of Manchester), 相馬 義郎(慶應義塾大・薬理学), 洪 繁(慶應義塾大・システム医学), 石黒 洋(名古屋大大学院・健康栄養医学)
抄録 【目的】膵導管細胞上皮は,約140 mMのHCO3-を含む等張液を分泌する.我々は,MATLAB/Simulinkを用いて,basolateralおよびapical membrane(BM,AM)に発現するイオン輸送体を介するイオン流速を定式化し,HCO3-輸送をシミュレーションしている.本研究では,MATLABの最適化アルゴリズムを用いて,各イオン輸送体の輸送活性等の解を求めた.
【方法】(1)多変数関数の最小化を行うNelder-Mead法を利用したfminsearch関数を用い,(2)BMにNa+-K+ pump,K+ channel,1Na+-2HCO3- cotransporter,Na+-H+ exchanger,AE2 1Cl--1HCO3- exchanger,AMにCFTR Cl- channel(HCO3-/Cl-透過性比:0.4)とSLC26A6 1Cl--2HCO3- exchangerを組み込み,(3)最適化対象は,モルモット単離小葉間膵管の発表済実験データ(平均と標準偏差);intrinsic buffering capacity(β)(pH 7.3で40 mM/pH unit),表層あるいは管腔灌流液にCO2を加えた時の細胞内pH変化,管腔を標準HCO3--CO2緩衝液(25 mM HCO3-)あるいは高濃度(125 mM)HCO3-溶液で灌流した時の細胞内pH,Cl-濃度,Na+濃度および細胞内電位,cAMP刺激時の溶液分泌速度(3.5 nl/min/mm2上皮面積)と分泌液のHCO3-濃度(140 mM),(4)最適化する変数は,βに寄与する弱塩基の濃度とpKa,CO2の膜透過性,各イオン輸送体の輸送活性である.
【成績】全ての実験データの標準偏差内におさまるように,各変数を最適化することができた.βに寄与する弱塩基濃度は100 mM(pKa 6.4),BMおよびAMのCO2の透過性の比は1/0.13,高濃度HCO3-分泌時BMを介するHCO3-蓄積へのNBC,NHE,AE2の寄与率はそれぞれ115%,3%,-18%,AMを介するHCO3-分泌へのCFTR,SLC26A6の寄与率はそれぞれ83%,17%となった.
【結論】膵導管細胞上皮によるHCO3-輸送のシミュレーションモデルの変数を最適化することができた.
索引用語 コンピュータシミュレーション, CFTR