抄録 |
アミノ酸輸送系Lは殆どの必須アミノ酸を含む大型の中性アミノ酸をNa+非依存性に細胞内に取込む役割を担う.中でもアミノ酸輸送系Lに属する中性アミノ酸トランスポーターLAT1は多くの腫瘍細胞においてその発現の亢進が認められている.今回ヒト膵がん由来細胞T3M-4, Panc-1, MIA PaCa-2, BxPC-3を対象に,代表的中性アミノ酸であるロイシンの放射性標識体を用いての細胞内取込み,およびRT-PCRを用いてのアミノ酸輸送系Lの遺伝子発現の解析を行った.その結果,LAT1とそのシャペロンである4F2hcは全ての細胞に発現し,その他のアイソフォームであるLAT2, LAT3, LAT4はそれぞれ異なるプロファイルでの発現を認めた.「14L-Leucineを用いた取込み実験の結果,いずれの取込みもNa+非依存性であり,LAT1特異的阻害薬であるJPH203に対しそれぞれ異なる親和性を示した.以上より,LAT1はヒト膵がん由来細胞における中性アミノ酸の取込みの主要な経路であるものの,細胞株ごとにそれぞれ異なる発現プロファイルと輸送特性を持つ事が示され,今後JPH203を用いた抗LAT1治療法を開発する際により有効な対象を定めて行く必要性が示唆された. |