セッション情報 ポスターセッション(消化吸収学会)

消化吸収-5

タイトル 吸P-19:

糖尿病患者における難治性下痢および嘔吐の治療に対し,呼気試験が極めて有用であった1例

演者 佐藤 高広(東邦大医療センター大森病院・総合診療・急病科)
共同演者 前田 正(東邦大医療センター大森病院・総合診療・急病科), 酒井 亜紀子(東邦大医療センター大森病院・総合診療・急病科), 宮下 弘(東邦大医療センター大森病院・総合診療・急病科), 財 裕明(東邦大医療センター大森病院・総合診療・急病科), 瓜田 純久(東邦大医療センター大森病院・総合診療・急病科)
抄録 【症例】80歳・女性【主訴】下痢(水様便),嘔吐【既往歴】2型糖尿病,慢性心不全,慢性腎不全,甲状腺機能低下症【現病歴】約1ヵ月続く水様下痢,嘔吐を主訴とし近医受診.同院にて内服治療を受けていたが症状改善せず.食思不振,全身倦怠感とともに全身状態の悪化も認めたため当科入院となった.【便培養結果】Normal Flora【入院後経過】絶食,補液にて症状改善せず,各種画像検査などにおいても異常所見を認めなかった.従って糖尿病性の消化管運動異常およびそれに伴うbacterial over growthの可能性を考慮し,13C酢酸Na呼気試験による胃排出測定および13C-lactuloseによる呼気試験を行った.その結果,胃排出は明らかな遅延を認め(Tmax=50分),13C-lactulose呼気試験においては試験開始後10分より呼気中水素濃度は上昇し(20-30ppm),胃排出遅延および小腸におけるbacterial over growthが示唆され,抗生物質投与による治療を開始した(CVA/AMPC 750mg分3).抗生物質開始後5日目に下痢は改善し,食欲も回復してきたため,再度呼気試験による評価を行った(抗生物質投与後6日目).胃排出遅延は改善していなかったものの(Tmax=40分),呼気中水素ガスの上昇は消失しており,抗生物質の投与が著効したと判断し得た.【結論】コントロール不良の糖尿病患者において,糖尿病性胃麻痺(胃排出遅延)に代表される消化管運動障害およびそれに伴うbacterial over growthの問題は知られていたが,検査の特殊性から一般の臨床現場において,簡便で客観的に病態を評価し得る手法は乏しかった.今回我々は13C呼気試験の結果を基に,糖尿病性消化管運動機能異常を背景とする,治療に難渋した慢性下痢・嘔吐症を効果的に診断,治療することができた.しかし,抗生物質の投与が腸内細菌叢にどのような影響を与えたか,具体的にその内容を捉えることは未だできておらず,今後のさらなる検討が必要であると考えられる.
索引用語 糖尿病, 呼気試験