抄録 |
C型慢性肝炎の経過において肝細胞癌の発生が肝不全に先行することが,欧米と比較したわが国の特徴である.この傾向は,年を追う毎に強まっており,直近では高齢者において肝硬変を合併しない肝細胞癌が3割以上を占めるに至っている.わが国においてC型慢性肝炎治療の第1の目標は,肝細胞癌の発生を減少させることであり,インターフェロン単剤療法の時代から,発癌抑止効果に関するエビデンス構築にわが国の臨床研究が大きく貢献してきた.発癌抑止効果は,持続的ウイルス陰性化(SVR)を達成した患者において顕著に見られる.その後の治療法の発達によってSVR率は著しく向上したが,それはそのまま発癌抑止効果の向上に寄与したと考えられる.しかし,近年に至るまで,肝硬変例や高齢者などの難治例における治療効果は十分でなかったと言わざるを得ない.インターフェロン療法は,C型肝炎から発生した肝細胞癌の治療後にも特に背景肝の治療と再発抑止を目指して行われてきた.SVRが得られた症例では,即時的な発癌抑止効果は限定的であるものの,肝機能を改善・維持することによって,また中長期の新規発癌を抑制することによって,長期生存に寄与することが示されている.しかし,肝細胞癌合併例は,C型慢性肝炎例の中でも,高齢,線維化進展例,血小板低値例を含む最難治と言って良い集団である.治療の適応になる患者も少数であり,SVR率も低かった.我々は,実臨床におけるペグインターフェロン,リバビリン2剤併用療法及びテラプレビルを加えた3剤併用療法の使用実態と治療効果を明らかにするために東大病院を中心とする多施設共同研究(Specific Molecule Antiviral Treatment Tokyo Hepatitis C: SMART-C)を立ち上げ,臨床データの収集を行ってきた.これらのデータを元に肝がん対策としてのインターフェロン療法の現状と課題を明らかにし,将来展望をお示ししたい. |