抄録 |
Intermediate stage Bの肝細胞癌に対する治療では,肝動脈化学塞栓療法(TACE)と肝動注化学療法(HAIC)が重要な役割を担っている.一般的に限局した高度脈管侵襲のない腫瘍に対してはTACE,両葉多発例や高度脈管侵襲例ではHAICが選択される.しかし,実際のTACE手技自体には施設間でかなりの差があり,また対象となる腫瘍の状態もさまざまである.TACEは有効な治療であるが同時に肝実質も障害するため,腫瘍因子の細分化とそれに応じた効果的なTACE手技を施行し,局所再発率を減少させることでTACE回数を少なくすることが重要である.TACEの治療効果に影響する因子としては,塞栓レベルと塞栓強度,塞栓物質径,治療安全域,使用する抗癌剤の種類,分子標的薬治療の有無などが挙がる.我々は6cm以下5個以内の腫瘍に対しては,塞栓域をモニタリングしながら門脈側までリピオドールを充填させる根治を目指した超選択的TACE,6cmを超えるが限局した腫瘍では,腫瘍崩壊症候群を回避するため4週間以上の間隔に分割した超選択的TACE,両葉多発例では抗癌剤の効果に期待する非選択的TACEを行っている.また経験的にTACEやHAICの前に分子標的薬を使用した例では,TACEやHAICの治療効果が増強される場合がある.TACE不応例では分子標的薬治療が推奨されているが,TACE不応の原因はさまざまであり,なかには技術的不応や薬剤不応も混在するため,我々はまず抗癌剤を変更し,限局例の場合は可能であればより末梢レベルでのTACEを施行している.それでも効果が乏しい場合には他の治療法に変更するが,分子標的薬を先行したTACEも選択肢の一つと考えている.また今後は球状塞栓物質の導入により,塞栓物質の使い分けも治療効果向上のための重要なポイントとなる可能性がある. |