セッション情報 ランチョンセミナー(消化吸収学会)

高齢者の便通異常をどう診るか―機能性便秘,IBSそしてIBDへ―

タイトル ラン25-1:

高齢者の便通異常をどう診るか~機能性便秘,IBSそしてIBDへ~

演者 髙本 俊介(防衛医大・光学医療診療部)
共同演者
抄録 日本は本格的な高齢化社会を迎え,それに伴って高齢者の消化器疾患を診療する機会が増加している.また,高齢者では便通異常の頻度が高まることは広く知られており,基礎疾患もさまざまなため,対応に苦慮することが少なくない.厚生労働省国民生活基礎調査によると,便秘を自覚する人の割合は65歳を超えると男女とも急速に増加していることがわかる.便秘の原因は一次性便秘である機能性便秘,便秘型IBS(過敏性腸症候群)と,二次性便秘である器質性便秘,症候性便秘,薬剤性便秘におおまかに分けられる.高齢者では若年者に比較して二次性便秘の割合が多く,特に器質性便秘の除外が重要であることは言うまでもない.機能性便秘に対しては,生活指導と薬物療法をうまく併用することが肝要である.薬物療法では間接的に蠕動を促進する乳酸菌製剤や,習慣性の少ない酸化マグネシウムなどがまず用いられるが,効果が認められない場合は習慣性に注意しながらセンノシドやピコスルファートNaなどを,極力頓用で使用する.IBSの全国的な調査として,2008年にShinozakiらは,10代から70代にかけて有病率は低下するものの,80代・90代で再度増加,青年期と高齢期の二峰性分布を呈すると報告しており,欧米からの報告と同様であった.高齢者IBSの特徴についてはまだ報告が少なく,若齢者と同様の治療を行っているのが現状であるが,高齢者に強力な下剤や止痢薬を投与すると腸管虚血を誘発しやすいことは念頭に置いておかなければならない.最後にIBDだが,潰瘍性大腸炎(UC)の約10%,クローン病(CD)の約5%が65歳以上の高齢者であると報告されている(厚労省難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班).人口の高齢化に伴って,高齢者IBDを診療する機会が増加しているが,基礎疾患や内服薬との関連,鑑別診断の難しさ,ステロイド治療に伴うサイトメガロウイルス再活性化の問題,生物学的製剤使用の是非,術後合併症など,高齢者特有の問題点がある.上記調査研究班における多施設共同研究の解析結果を中心に報告する.
索引用語