セッション情報 | ランチョンセミナー(消化器病学会)便秘診療:最近の話題 クロライドチャネルアクチベーターの使用経験 |
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タイトル | ラン55-1:便秘診療:最近の話題 |
演者 | 稲森 正彦(横浜市立大附属病院・消化器内科) |
共同演者 | |
抄録 | 便秘症には現在明確な定義がなく,便自体の硬度が硬いこと,便の量が少ないこと,排便の頻度が少ないことを便秘とすることもある.あるいは便は普通に出るが残便感や腹部膨満感のような症状が重なる場合や,最近では排便に時間がかかる場合,排便時に手でお腹を押さえるような排便困難がある場合も便秘と捉えることができる. 日本の各学会における便秘の定義として,日本内科学会では「3日以上排便がない状態,または毎日排便があっても残便感がある状態」とするのに対し,日本消化器病学会では「排便困難や腹部膨満感など症状を伴う便通異常」を便秘症と定義している.一方欧米では,ROME基準に基づき機能性便秘を症状ベースにて診断し,過敏性腸症候群は除外するという基準を採用している. 便秘の分類について,日本ではまず器質的便秘と機能性便秘に分類し,機能性便秘を症候性便秘と習慣性便秘に,そして習慣性便秘を弛緩性便秘と痙攣性便秘と直腸性便秘にと,3つの階層からなる分類となっている. 現在の便秘治療は,まず器質的疾患を除外した後に生活指導を実施し,多くは薬物療法を行うというのが現状である.生活指導として,適切な食事の摂取と十分な繊維質・水分・乳酸菌含有食物の摂取,定期的な運動習慣,規則正しい睡眠習慣と排便習慣などがあり,薬物は刺激性下剤,機械的下剤,その他の下剤,浣腸・坐薬などに分類できる. 我が国における便秘治療の問題点としては,刺激性下剤の処方量が他の国と比較して非常に多い点であり,薬剤の耐性による処方の増加が懸念されている.刺激性下剤の頻用による大腸黒皮症に関しては,最近の研究ではがんとの関係性を示唆する論文も出てきている.また,塩類下剤の代表である酸化Mgも汎用されているが,高齢者,腎機能障害者において高Mg血症が報告され,注意喚起がされた現状がある. 便秘の診断・治療については日常診療でよく遭遇する症候であり,患者の生活の質や労働生産性に大きく関わる疾患であるため,今後新しい治療薬を含め更なる研究発展が必要とされる分野である. |
索引用語 |